2010年9月18日土曜日

ケーススタディで学ぶ入門ミクロ経済学(PHP研究所)

著者:石川秀樹 出版社:PHP研究所 発行年:2010年 本体価格:3,000円 評価:☆☆☆☆☆
 学生時代には林敏彦先生の「ミクロ経済学」を読んでいた。無論名著であるが、社会で働き始めるとそのほかスティグリッツやマンキューの経済学入門の書籍が刊行されたり改訂されたりしても読もうという気にはなかなかなれない。ミクロ経済学についてはある程度素養があるつもりだが、実務で活用するにはやはり縁遠い世界だと思っていた。
 この本は書店で手にとって「これは使えるかも」と思い購入。実際読み始めてみるときわめて面白く3日ほどかけて読み終わる。ミクロ経済学のかなり微妙な前提(人的資本の限界投入など)は現実には不向きだと思っていたし、機会費用概念は会計学的費用で動いている現実の企業活動を説明するには抽象的過ぎる。ただし限界費用が増加してその後に平均費用が増加するということがこの本で指摘されており、確かにそう考えると本来あるべき最適生産量(限界費用と限界収入が一致する生産量)よりも現実には多めに過剰生産されていることに気がつく。「ちょっと少なめ」の生産量で実際には在庫などの社会的コストも削減できる余地があるということになる。
 一般のテキストにはほとんど全部の前書きに「学生やビジネスパーソンに」と書いてあるが、ビジネスパーソンのつかの間のひと時をミクロ経済学の学習にあてるのには最適の1冊。最近過剰生産気味の「ビジネス書籍」よりもずっとビジネスにも生活時間の充実にも役立つことだろう。

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