2010年8月28日土曜日

大聖堂 果てしなき世界 中巻(ソフトバンク クリエイティブ)

著者:ケン・フォレット 出版社:ソフトバンク クリエイティブ 発行年:2009年 本体価格:950円
 1337年6月から中巻が始まる。スクワイア(騎士見習い)から騎士、そしてシャーリング伯爵となったラルフと農地をもとめるグウェンダの悲痛な場面から始まる。「領主は農民と取引などしない」という冷徹な言葉が封建制度のなんたるかを簡潔に表現している。「市」がすでにキングスブリッジとシャーリングの両方にとって大きな利権(税収入)を生む土壌となり、市場を活性化するための橋の建築が不可避となる。そして羊毛産業だけでは街がなりたたなくなり、キングスブリッジは布産業への下流へ展開していく。1346年エドワード3世はポーツマスで艦隊を結成し、フランスに上陸。100年戦争で荒廃したフランス本土に修道女2人がわたり、凄惨な戦場を修道女が変装して渡り歩く場面が印象深い。フィレンツェで家族を失った石工は再びイングランド戻るが、ペストの襲来の予兆はイングランドにも現れてくる…。
 魔女狩り、100年戦争、ペストの3つの大きな世界史的事件を背景に架空の街キングスブリッジで芽生えようとしていた自由都市の機運と修道院、封建制度の規制とが対立し、個々の登場人物は人間関係と制度の両方に翻弄されていく。上巻に引き続いて一気に朝までかけて読みぬいてしまう面白さ。

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