2010年8月16日月曜日

日本経済のウソ(筑摩書房)

著者:高橋洋一 出版社:筑摩書房 発行年:2010年 本体価格:740円
 日本銀行により一層の量的緩和と公的部門のメリハリのついた財政政策をとなえる新書。郵政民営化については財政投融資が廃止されたことにともない、将来的に資金運用方法のノウハウを蓄積しないと税負担がさらに重くなる可能性を指摘。確かに、もはや財政投融資制度がない今、外資系に対抗しうる業務展開をしておかないと、将来的には巨額の預金を抱えたまま右往左往するはめになりそうな気がする。
 個人的には日本銀行の懸念も理解できるふしがあるほか、いったんインフレ傾向になったら、過剰流動性の懸念がある現在、ハイパーインフレになるリスクも織り込んでおく必要性があると考える。したがって、失業率なども中央銀行の目標に加えるべきという筆者の主張にも一定の理屈があると思うが、いまは意図的にデフレ気味のマネーサプライ供給を実施している日本銀行の努力に目がむく。総体としては小さな政府と市場原理による財政政策も市場の原理にゆだねたほうがよいという筆者の主張には賛成。ただし、中央銀行の金融政策や目標設定については、諸外国の例をもちだされてもやはりインフレの加熱は心配だ。通貨管理制度でマイルドなインフレにおさえることができる…のはともかくとして、マネーサプライがいつ供給を飛び越えてしまうのかは、実は市場がどれだけ冷静に対応できるのかという予測不可能性によるところが大きい。実際にこれ以上の量的緩和をしてみたら、予想以上に総需要が高まってしまい、かえって前よりマクロ経済は悪くなってしまった…ということだってありうる。今は金融政策うんぬんよりも、誰もが予想しない財政政策の目玉を考案するほうが優先順位が高かろう。

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