2009年12月1日火曜日

貧困ビジネス(幻冬舎)

著者:門倉貴史 出版社:幻冬舎 発行年:2009年 評価:☆☆☆☆☆
 リーマン・ブラザース不況がさらに日常生活のあちこちになげかける暗い影。それが著者がなづける「貧困ビジネス」である。貧困者を相手にさらに利益を搾取しようとするビジネスを総称するが、多重債務者に養子縁組をさせてさらに借りさせるビジネスや臓器売買、偽装結婚、二重派遣、食品偽装、そして貧困対応型セックスビジネスなど、「知恵」のまわる悪人たちが考え出した貧困ビジネスは行政の想定外の行動で営利を搾り取る。さらに行政の改正割賦販売法が施工された場合(2010年)、クレジット業者が登録制になるほかクレジット会社には個人消費者の与信能力の調査義務が課される。つまり与信能力がないとみなされた消費者はクレジットカードが使えなくなるわけだが…。これが民間消費を冷え込ませることになりはしないか、という著者の疑問は「もっとも」な懸念である。改正貸金業法も2010年6月より貸出上限金利が20・0パーセント、さらに貸し付け金額も収入の3分の1以下までとされる。これで問題がすべて解決すればいいのだが、おそらく著者が想定しているように、ヤミ金融からの借り入れをする消費者が急増するというリスクは高い。新書サイズではあるが内容は非常に濃く、しかも2009年末現在の世相をかなり克明にうつしとっている描写が多い。いくつかの事例は著者自身が取材にあたって価格の相場などを調べたものと思われるが、一読して「景気の余波」について考えてみるには絶好の書籍といえるだろう。また10年後、20年後に経済史の参考文献として利用できる内容でもある。

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