2009年12月27日日曜日

私という病(新潮社)

著者:中村うさぎ 出版社:新潮社 発行年:2006年 価格:1,200円(単行本) 評価:☆☆☆☆☆
 ホストクラブ、ブランド依存などを実地に体験して、自分の心で感じたことを経験をふまえて掘り下げていく中村うさぎ。そのルポは、読者にとっては痛々しくもあるが、読み始めるとやはり最後まで読み通してしまう「力」を持っている。広いジャンルわけでいくと「フェミニズム」の本というジャンルになるのだろうが、ここで中村うさぎは狭義の「フェミニズム」に対しては拒否感めいたものを文中で示しつつ、男性の「暴力性」「差別性」がぐっさり浮き彫りにされていく。これを単なるデリバリーヘルスの物語とか体験ルポという位置づけで終わらせてしまうのは、むしろ「逃避」だろう。女性読者が多いといわれているが、むしろ読むべきなのは、家庭をもつ男、独身の男、まだ何もしらない男子学生といった「男全般」であるかもしれない。女性を神のようにあがめるのも、逆にDVの対象にするのも「普通の人間」として位置づけることができない男性の問題。さらには妻に「母性」を見出すのも、男性の手前勝手な「妄想」であることが明らかにされていく。
 当時47歳の中村うさぎが31歳と偽って面接を受けに行くコミカルな場面から、次第に「物語」は中村うさぎ本人のモノローグへ、そして男性全般に向けたメッセージへと転化していく。これ、男性は年齢を問わず必読の名著ではないか。

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