2009年12月23日水曜日

小宮一慶の「深掘り」政経塾(プレジデント社)

著者:小宮一慶 出版社:プレジデント社 発行年:2009年 評価:☆☆☆☆
 いわゆる経済評論家のなかでも「まめ」に購入して読んでいるのがこの小宮氏の書かれた一連の書籍。「貯蓄から投資へ」という推奨のなかで、「デフレのもとでは定期預金が一番」という個人的な考え方と一致する点が多いというのがまずその理由のひとつ。ふたつめは、かなり重い病気を克服されて「残りの時間」をいかにすごすかといった哲学的な要素が感じられることが挙げられる。
 この本の中でも安易な投資を批判し、実質利子率は定期預金のほうが上という考え方で「よほどの自信」がないかぎりは投資をするべきではないという理論を展開。JALとダイエーの共通点から最低賃金法、国際関係まで「深い見方」を展開してくれる。
 基本はやはりオーソドックスなマクロ経済学とミクロ経済学だが、その理論と現在の事実を「つなげて考える」手法が本書の見所。人間には忍耐や向上心がある以上は「理論どおりにいかない」という人間的な見方で理論を修正し、近代経済学の「限界利益ゼロ」の状態であっても市場から退出しない企業が多いことを説明してくれる。オーソドックスな理論がベースにあるからこその現実の深い分析力に説得力が加わる。国連気候変動枠組み条約会議についてもアメリカとロシアの覇権をめぐる動きとからめて非常に説得力のある見方を示してくれている。

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