2009年12月27日日曜日

なぜ社員はやる気をなくしているのか(日本経済新聞出版社)

著者:柴田昌治 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2007年 価格:1,500円 評価:☆☆☆
 株式会社スコラ・コンサルトの代表取締役による社員の「内発的動機」の促進についての本。教育学部のご出身だが、おそらく教育心理学をビジネスの現場に応用した成果をコンサルティングに活用しているのではないだろうか。マネジメントにおける対話が重視され、一方的な上意下達では「知恵」や「各論をつくりこむこと」などは難しいとしている。会社の多くはピラミッド型でそれぞれが上司に不平をいいつつ、命令一元化の原則のもとに「対話」がないままに業務が進行するという形をとる。こうした対話がない場所で、制度を成果制度に変更しても終身雇用制度に変更しても何も機能せず内発的動機を高める効果は薄いとされる。著者は「対話」とは「(解答を)一緒につくっていく能力」としているが、上司の一元的な「解答」があらゆる要素を考慮した問題解決のベストアンサーではありえないのだからそこに「対話」が必要となる。また想定外の状況に陥ったときに「対話」がなければタコツボ状況の専門家がバラバラに勤務している状態では、ベスト・アンサーを得ることはできないだろう。「対話」の次に重視されるのが「情報の共有」でこれは対話のベースとなるシステム化だ。こうした理論ベースの応用編として不満分子の隠れたやる気を引き出すスキルなども紹介されてくるのが、最大のキーワードはやはり「対話」と「情報の共有」であろう(サブタイトルにもなっているスポンサーシップはリーダーシップの変形ともいえるが、要は対話や情報の共有を懐深く受け入れる許容性のことだと個人的には解釈している)。
 コーチングやリーダーシップ論の本はやまほどでてきているが、「場」を作り上げるという観点での著作は非常に珍しい。個人的資質の向上だけでなく、チーム全体での活性化を考えたときに、「情報の共有化」をいかなる形で具体化していくべきか、あるいは「対話」をいかなる形で現場に落とし込んでいくべきかといった応用がそれぞれの会社で可能になるだろう。タイトルはやや「キワモノ」的だが、汎用性の高いコンサルティングの現場から生み出された経験則がふんだんに紹介されているマネジメント系統の書籍。

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