2009年12月19日土曜日

出社が楽しい経済学2(NHK出版)

著者:吉本 佳生 出版社;NHK出版 発行年:2009年 評価:☆☆☆☆☆
 ロックイン、コミットメント、ヴェヴレン効果、「心の会計」、スクリーニング、勝者の呪い(オークション)、レントシーキング、規模の経済性といったテーマが扱われた新しい観点からみた経済学入門。これまで「経済学入門」といった場合には、マクロ経済学的な書籍が多かったのだがこの本では、ミクロ経済学とゲーム理論が重複する「行動経済学」で扱われるテーマを中心にわかりやすく解説されている。「レント」についても非常に難しい用語だが、「官僚などへの接待のようなもの」という非常に的確なイメージで理解を促進してくれる。「価格」のもつ合理性については伝統的なミクロ経済学が得意としてきたが、必ずしも現実の人間はその「合理的」な結論にしばられない「非合理性」をもつ。ただし著者はその点についてもミクロ経済学の理論からすれば「非合理的」だがそれ以上の価値観を持ち込むべきではないとして、「合理性」の枠を限定して著述を進めている。そこがさらに好感がもてる。どうしてもゲーム理論など「現実妥当性」に準拠したくなるが、ミクロ経済学の伝統的理論の学習に加えて、本書が扱うような「非合理性」や「人間心理」の問題も理解していくべきだろう。変形サイズの書籍なのでやや持ち運びしにくいが、その分ページ数が圧縮してあり、カバンにいれて通勤・通学の途中で読むには問題ない。価格も1260円と良心的な設定。

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