2009年12月14日月曜日

3つの原理(ダイヤモンド社)

著者:ローレンス・ストーヴ 出版社:ダイヤモンド社 発行年:2007年
 「big picture」というか歴史の流れを社会階層や性差、年齢の3つの軸で分析し、さらに将来を予測していく。ヒンズー教の「ユガ」などを題材にして、戦士の世界、商人の世界、労働者の世界、宗教・精神の世界へと世界の軸が変化していく様子を描写。必ずしも納得できるテーマではないのだが、ただ「戦士→商人→労働者」という価値観の移り変わりにはなるほどと思う。日本の場合には武士から財閥、そして現在の「労働」の時代に至るわけだが、現在の日本の首相がとやかくいわれているのも、労働組合から支持をえておきながら、9億円の「贈与」(もしくは借り入れ)を母親から受けることができるという一点に尽きるのではないかと思う。だってそんなの労働者じゃないもの。
 こうした労働者の世界では経済のブロック化が始まるというのもわかるような気がする。マルクス主義者の中でも国際主義者の方たちは「万人の労働者の連帯」をいうのかもしれないが、実際には「地域的な連帯」が軸となり、ほかの地域との経済競争が激化するという予測のほうが真実味がある。それはEUやNAFTAといったブロック経済の高まりが実際に発生している現実もその理論を裏付けている。ただそういうブロック化の中で「儒教文化圏」という枠組みは「?」という感じ。そもそも儒教は宗教ではないし、日本、中国、韓国の地域ブロックというのはEU以上に歴史的な溝が大きいからでもある。アジアでブロック経済圏ができれば確かにEUに対抗しうる将来の「軸」として考えられるが、それぞれの国の民族主義的な気風は、21世紀になってからますます高まっている印象。実際にブロック経済の重要性を認識しつつも、感情的な面で経済的な連携は難しいのではないかと思う。とはいえこういう「big picture」を語るビジネス書籍。最近では珍しいうえに、個々のニュースを関連づけて分析していく上でも有用な内容ではないかと思う。評価は☆☆☆。

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