2008年9月15日月曜日

空中ブランコ(文藝春秋)

著者:奥田英朗 出版社:文藝春秋 発行年:2008年(文庫版) 評価:☆☆☆☆
 単行本の発行が2004年で文庫本は今年の1月にでたばかり。「イン・ザ・プール」の続編にして,第131回直木賞受賞作品。「お笑い」タッチの短編集だが,内容としては前作以上に笑える。明らかに主人公の伊良部自体が「病人」なのだが,その様子を患者がみて自分自身の新たな生きがいにしているようなそんなたくましい情景が5つ。特に大学病院を舞台にした「義父のヅラ」は読んでいて転げるほど笑った。明らかにヅラとわかっている学部長でもある義父のヅラを「はがしてみたい」という衝動にかられる精神科医。ラストはついに…という展開なのだが,こういう瞬間,けっこう実際にあるものなんだよなあ…。「ホットコーナー」では,プロ野球選手を題材に「コントロール」について考えさせられる。笑いと「泣き」のこの見事な調和と「最悪」にみえる「暗さ」との対比が見事な作品集。なにかこの作風の落差もまた一つの魅力かも。

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