2008年7月19日土曜日

小説ドラゴン桜~魂のエンジン編~

著者:里見蘭 原作:三田紀房 出版社:講談社 発行年:2007年
評価:☆☆☆☆
 発行元の講談社のサイトをみてみると在庫なし,となっている。まさか増刷しないということではないと思うが,漫画とは違う面白さと深みがあるので是非残して欲しい文庫版。簡単な作業でもチェックは必ず2回,大事な局面でミスをしない人間をめざせ,という指摘は教育指導者としてはあるべき姿。小説の中には25年分の過去問題を研究している受験生も登場してくるが,これもあるべき姿だろう。過去問題の研究は資格や受験にはつきものではあるが,25年分もやっておけば確かに間違いは少ない。成功する人間はあまりごちゃごちゃ考えずに利用できるものは利用して結果を出す…というシンプルさが好ましい。個性も自主性も規律と統制の中から生まれるとする「桜木弁護士」の立場はある意味正しい。
 最終的には二人とも10数年後の話になるのだが,いずれもあるべき姿になっている。中央官庁の官僚ではなくそれぞれボランティア団体や弁護士として活動しているのだが,個人的にはこうした社会的活動に身を投じている東大生のほうが多数派なのではないかと思う。優れた研究設備と図書館,教官に囲まれた4年間の中でもまれているうちにまた高校時代とは違う目標が発見され,目標にむかって正しい努力を続ける。もちろん利用するべきものは利用するというプラグマティズムも必要だが,そうした実学的な努力がまた「哲学的な活動」にも結びつきそうだ。漫画とはまたおそらくぜんぜん違うであろうラストにまた一つの感慨を覚える。この5巻は5巻でまた別個の独立した世界が構築されていて非常に面白い。

0 件のコメント: