2008年7月14日月曜日

反転~闇社会の守護神と呼ばれて~(幻冬舎)

著者名:田中森一 出版社:幻冬舎 発行年:2007年
評価:☆☆☆
 著者の田中森一氏はすでに最高裁への上告が棄却され,実刑判決3年が確定。すでに弁護士資格も喪失したようだが,それでもなお,この本は興味深い内容だ。主に前半が大阪地検,東京地検に在職中の回顧談,後半が弁護士になってからの活動がメインとなるが,自らのプライバシーも明らかにしつつ,政治的判断と検事のあり方をめぐる前半が非常に面白い。また実名で登場する政治家の中でもY氏の行動はきわめて興味深く,仕手筋そのほかの行動形態も興味深いの一言に尽きる。M重工CB事件についても実際に捜査を手がけていたのがこの田中元検事だったということで,当時は非常に不透明な印象をいだいていたのだがある程度この本を読んで裏事情が判明したような気もする。もちろん一方的にこの本の内容を信じるわけにはいかないが,これまで不透明だった種々の事件に一種のリアリティというか別の側面から光があたるのは好ましい。もともと相当に力量がある上に,エスタプリッシュメントともアウトローとも親交があったということで,後に一つの歴史資料としても役にたつ本になるだろう。「いろいろな思惑が交錯」する世界の中で,一つの考え方が明示されたともいえる。もちろん編集者がかなりうまく章立てそのほかを勘案したのだとは思うが,幼少期や学生時代の想い出と,フラッシュバックするように「検察庁時代」「アウトローの時代」と巧みにおありまぜた構成は,エンターテイメント小説以上の面白さ。原稿用紙820枚の大部だが一気に読み終わってしまう面白さである。

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