2008年7月8日火曜日

美容院と1,000円カットでは,どちらが儲かるか?(ダイヤモンド社)

著者:林總 出版社:ダイヤモンド社 発行年:2008年
評価:☆☆☆
 管理会計入門を物語で紹介。ただしレベルは非常に高く,まず既存の管理会計(製造間接被の配賦計算など)を理解していないと途中で何が間違っていて何があるべき姿なのかがわからなくなる可能性も。ERPパッケージという会計情報システムも目的意識をしっかりもたないと役に立たないということを丁寧に説明している。コストをかければいい製品ができるという神話をくつがえすとともに,ビジネスプロセスをしっかり会社側で把握することが大事という原理を丁寧に解説。また売上高だけで営業のインデックスにすると,売上高のために販売促進費が増大したり,値引き合戦が始まるという欠点も指摘されている。このあたりは営業関係の仕事についている人にも耳が痛い話が続くのではないだろうか。そのための解決策として限界利益や貢献利益など,直接原価計算の手法や責任会計,予算制度といった話につながっていく。確かに一定の手間がかかるが,ある程度自由なビジネス活動を保持しつつ責任とモチベーションを維持するためには,責任会計や予算制度は重要なツールになるだろう。テーマは「美容院と1,000円カット」となっているが,実際には衣類品メーカーがいかにしてERPパッケージを活用していくか(またその導入にあたってのアドオンにも注意が必要なことなど)のケーススタディとなっている。ハイレベルでなおかつ面白い内容の書籍。

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