2008年2月25日月曜日

マリ=アントワネット1(みすず書房)

著者名;A.カストロ 村上光彦訳 出版社;みすず書房 発行年;1972年
 2部作の前半部分。ルイ16世と結婚し、4年後にルイ15世崩御のあとに王妃となってからの享楽的な生活を地味に文書から掘り起こして描写していく。18世紀の時代の雰囲気をどちらかといえばリアルタイムに描写していこうという筆者の意気込みは、膨大な文献作業から掘り起こした文書に裏打ちされている。いろいろ取りざたされているスウェーデン陸軍のフェルゼンとの関係についても「自制する恋人たち」という結論を導き出している。第1巻は有名な「首飾り事件」で幕を閉じる。是か否か、という価値観は今となっては第1巻をみるかぎり、マリ・アントワネットには当時の貴族として守るべきものを守っていなかった…というのはあるだろう。マリア・テレジアの書簡の引用に宮廷での謁見がどうして必要なのかが述べられているが、オーストリア帝国を率いたリーダーにふさわしい細心の注意が述べられている。そしてルイ15世からの治世の「歪み」もまたこの本から浮かび上がってくる。カペー王朝の崩壊については、マリ・アントワネットの放蕩などは「最後の一押し」に過ぎないのかもしれない。1972年発行の本だが、今でも販売されているのかどうか。こういう名著がまた書店にたくさん並ぶ時代になっていてほしいものだが…。古書店で入手。定価2060円。278ページ。

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