2008年5月27日火曜日

手紙の書き方(講談社現代新書)

著者名;安田武 出版社:講談社 発行年:1978年
 残念ながらもう絶版となった講談社現代新書。定価は私が保有しているもので450円だ。手紙の書き方とはいっても難しく考える必要はないが、少なくとも「型」をしっかりみにつけることの重要性がエピソードを豊富に交えて語られている。第2編では日本人と季節感について述べられており、小説そのほかに季節感がいかに日本人に大きな影響を与えているのかが述べられている。桜からつつじ、つつじから藤、藤の花から菖蒲(あやめ)といったこの時期の季節感は確かに日本人がかなりこだわるものである。毎年同じように見えて実は違う。そうした季節感を手紙に織り込むことの大事さを筆者は説いているのだと思う。
 昨今の「手紙論」とは異なり、著者はさらに手紙の「型」から日常行動の隅々にまで型を持ち込むことにまで言及している。相撲の技や花道の七三なども型である。人間と人間の集団的な暮らしに一種の約束事が必要となり、それは形式主義とは無縁のことだ、と筆者はいいたいのだろう。いわゆる手紙の常識とか儀礼ごとのリストが始まるのは169ページから。書き出しの挨拶そのほかの定型がリストになっており、今でいうとテンプレートということになるだろうか。これらは記憶するものではなくむしろ型の一つとして利用せよ、と著者は主張しているのではないかと思う。購入してから、おそらく20年ぐらいは過ぎているのではないかと思われる古い新書。今ではウェブで検索してもなかなか入手しにくい本のようだが、こうしてその一冊は自分の本棚に眠っていたのがまた目を覚ます…。

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