2008年5月27日火曜日

エースの品格(小学館)

著者名:野村克也 出版社:小学館 発行年:2008年
 稲尾、杉浦といっただれしもが認める過去のエースや現在プロ野球で活躍する現役の選手を取り上げ、エースと呼ばれる条件について著述。「小事、細事が大事を生む」の実例として杉浦ほどのスピードはでなかったもののスライダーを覚えたことによって30勝を達成した皆川投手の例などがあげられている。力も技術も先をいく相手に対して、どうすれば勝つことができるのかを思案するのはビジネスの世界にも似ている。資本や労働力、知的財産がはるかに巨大な企業に対して小規模な企業が勝つにはどうすればいいのか。一つの失敗が後の糧になることを前提として仮説を立案して、相手の情報を分析し、さらにその弱点をつく。集団行動であることと人間が主体となる点では、プロ野球と企業経営の類似点は非常に多い。結果を出すことによって興味が湧き、興味がわくことによって努力を続けることができるという好循環をいかにして生み出すのか。そしてそれを個別の人間の個人的な努力に終わらせるのではなく一つの「仕組み」にするにはどうするべきなのか、といった工夫と改善には終わりがない。個人的にこの著者の新刊がでたら買おう、と決めている著者としては野口悠紀夫さん、和田秀樹さんといった方々になるが、野村克也監督の著書もやはり新刊がでれば即購入する。才能で花開いた人の技術は移転不可能だが、努力で花開いた人の技術論は凡人にも移転可能だ。最終的にそうした地道な努力が「人をいかす」「人によっていかされる」といった人生論にまでつながっていくのは一つの道を究めた人に許される特権だろう。

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