2013年6月4日火曜日

編集者の仕事(新潮社)

著者:柴田光慈 出版社:新潮社 発行年:2010年 本体価格:700円
 編集関係の書籍は非常に多いが、新書のかたちで技術論的な事柄も含めて出版されるのは珍しい。著者は長年、老舗の出版社で編集者として勤務され、担当された作家は丸谷才一、山崎正和、佐江衆一、辻邦生、矢沢永一、安部公房…とそうそうたるご執筆陣。それでいて非常に謙虚な語り口と含蓄の深い書籍への思いが読者の胸をうつ。「年表は地味な仕事だけれど」「口絵写真は貴重な記録」といった地味な作業の積み重ねがこの新書に結実しているのかと思うと、1ページ1ページを慎重に読み進め、一文に込められた含意を、拙いなりに解読するのも楽しい。
 新書サイズで208ページという構成ながら、書籍各部の名称、製本の区分、目次の作成、本文の組み方、判型、タイトルの付け方、四六判の由来、余白、横組の注意点、ノンブル、見出しと小見出し、索引、写真処理、奥付が縦組の場合に左ページにある理由、校正、原稿の整備、ルビ、引用の表現、活版印刷、文字の字体、欧文書体、約物と罫線、本の装丁、紙の重さ…と一通りのことがすべて網羅されているのも素晴らしい。専門学校系統の編集の参考書は、ともすればとんでもない厚さで読む気を最初からなくさせるが、新書サイズでこの内容は読者の「可読性」にかなり配慮している。まさしく「職人」による職人技の編集の本だ。

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