2013年6月24日月曜日

資産フライトの罠(宝島社)

著者:香港インベストメント取材班 出版社:宝島社 発行年:2012年 本体価格:743円
 一時期外貨建預金がはやった時期があったが、おもにその理由は日本の金利よりもはるかに高い金利が魅力だったのではないかと思う。円高のときに預金して円安のときに引き出せばかなりの為替差益を稼ぐことができるが、(少なくとも)日本の外貨建預金の多くは満期日におけるレートで円換算しておかないと、為替差益を確定することができない。ある意味ではかなりリスクの高い金融商品で、だったら最初から香港やマレーシアなどの海外に預金口座を作ってそこで運用し、都合のいいときに引き出すという方法だってなくはない。ただし、そうした方法にも海外に定住するという目的以外では多くの罠が存在する。この本ではアドバイザーの罠、投資ツアーの罠、ハンドキャリーのリスク(手持ちで貨幣を持ち出し、運び入れること)について解説してくれる。特に海外資産に対する国税庁の課税が詳しい。国籍離脱や海外居住者と認定されないかぎりは、海外で運用した預金にも日本国の税法が適用されるため、せっかく香港では非課税だった運用益でも国内基準では課税されてしまうというリスクだ。全体を通して読むかぎり、よっぽどの資産家でないかぎりは、海外で運用するなんてほとんど見合わない運用方法で、国内にいる場合でもこれだけ為替が変動する状況で外貨建預金や外貨FXなどは、もともと「捨て金」のつもりで運用しないと下手なギャンブルよりもリスクが高いということがわかる。「億」単位の資産家であれば、まあ、海外への資産フライトもありかもしれないが‥。某消費者金融関連の法廷闘争の判例など課税関連の判例の紹介がきわめて興味深い。

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