2013年6月6日木曜日

今日,会社が倒産した(彩図社)

著者:増田明利 出版社:彩図社 発行年:2013年 本体価格:1,200円
 えらくシンキくさいタイトルで、さらに内容もあまり明るいとはいえない。しかし中規模書店では平積みである。今日、日経平均株価が13,000円を割り込んだ。アベノミクスの三つめの柱である「成長戦略」に「サプライズ」が少なかった、中国経済の先行きに懸念があるといった理由が挙げられているが、史上希にみる金融緩和が果たして今後の実体経済の回復につながるのかどうか、株式市場の投資家が冷静に見極めようとしているのは間違いない。日本銀行の金融政策は短期金利にはきわめてダイレクトに影響を及ぼすが、長期金利市場についてはさまざまな思惑が錯綜するため、大規模な金融緩和が果たして長期金利の低下に本当につながるのかどうかは実は定かではない。というのも都市銀行や生命保険会社は国債を保有してもし国債価格が下落すると損失を出すことになる。勢い国債の購入を控える→長期金利の上昇要因となる…(ただし金融緩和そのものは長期金利の下落要因となる)。上昇要因と下落要因が錯綜してどちらの力が強いのかは正直だれにもわからない。先行き不透明であれば、だれしも投資や消費に積極的にはなれない。結局変化の時代の先行きの不透明さは、今のところ安倍内閣の金融政策と成長戦略の基本方針だけではまだ払拭されていない。
 そしてこういう16人の失業者のレポートが再び売れ行きを示すことにもなる。平成18年に入社して平成24年5月に自主廃業した会社の元社員、服飾会社に勤務していた元デザイナー、元建設会社の社員で失業期間1年目の49歳男性、情報通信関係の元社員31歳…など現在進行中の求職者の体験談をまとめたのがこの本。国家公務員は国家が債務不履行(いわゆる国家の破綻)に陥るまでは永久就職のようなものだが、それ以外は変化の時代に先行き不透明なのは、金融をどれだけ緩和してもあまり変わるところがない。「不確実性」をどれだけ排除できるか、がポイントでマネーストックの量を拡大しても、それが原因で債券市場や株式市場が乱高下するのでは、結局、消費や投資の拡大にはつながらないためである。「不確実性」の範囲があまり縮小しない以上、ややスキャンダラスなタイトルではあるが、こうした本の売れ行きが下がることはしばらくはないように思われる。

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