2013年6月11日火曜日

確率論的思考(日本実業出版社)

著者:田渕直也 出版社:日本実業出版社 発行年:2009年 本体価格:1600円
 ず~っと「積ん読」だった本をようやく読了。いろいろな変化の可能性がある時代では「多様性」が大事で、意外に今の世の中は「偶然」が支配していることも多い、とする著者の考えが述べられている。自己啓発というよりも、量子論の紹介から多元的世界の解説へ、失敗の許容と開発から長期的世界観へ、と著者の金融市場を読み解くうえでの世界観があらわれていて興味深い。普通の正規分布とは異なり、株式市場ではほんのちょっとしたことが大幅な株価の上昇や下落を招くことがある。正規分布は独立事象のみを集めたときに見られる現象であって、株式市場ではそれぞれのプレイヤーが相互に影響を持っているためだが、著者はそうした「べき分布」の世界を「複雑系」の概念で読み解いていく。
 著者の略歴をみると破綻した日本長期信用銀行の出身で、その後三菱UFJ投資信託に移籍している。もともと移籍が珍しい世界ではないが、こうして実際に金融市場で生き残れてきている力量のエッセンスがこの本に記されているようだ。著者のさまざまな分野の博学さが魅力。

0 件のコメント: