2013年6月10日月曜日

初歩から学ぶ金融の仕組み(左右社)

著者:岩田規久男 出版社:左右社 発行年:2010年 本体価格:1619円
 もともとは放送大学のテキストだったものを講義終了後に新たに一般書籍として再編集したもの。著者は現在学習院大学経済学部教授から日本銀行副総裁に就任された岩田規久男先生。もともとデフレの問題点と金融緩和による期待インフレ率の上昇やインフレターゲットの論客として知られていたが、この書籍ではインフレターゲットについては最低限のページしかさかれておらず、むしろマクロ経済学の基礎をがっちり固めるという色合いが強い。スワップ取引やオプション取引が脈絡なく突然講義が始まり突如終了するのが唐突だったが、これはやはり放送大学のテキストが元なので、一単元あたりの時間数とテキストの配分によるものだろう。数式は横組みで解説は縦組みだがさほど読みにくさは感じない。ただいきなりこの本で金融論を学習するよりも、やはりマクロ経済学を一通り学習してから金融論に入ったほうが学習効率は高そうだ。ISーLM曲線もでてこない金融の本だが、最近はISーLM曲線で説明する方式にも批判が一部あるようなので、これも時代か。海外部門が黒字主体か赤字主体かの説明のくだりで、これまでなぜ「輸出−輸入」ではなく「輸入−輸出」になるのか曖昧だった部分がすっきりわかるようになった(海外部門からすると日本への輸出(日本からみれば輸入)から輸入を差し引いた部分が貯蓄になるためだが、そういう視点の発想はまるでなかった。こういうのは実際の授業で耳にしておけばあまり誤解することはないのかもしれないが、書籍主体で学習していると意外に「誤解」を十何年もひきずりかねないのが独学の怖いところか。本体価格はやや高めだが、それほど部数が出る書籍とも思えず、むしろ良心的な価格設定ではないかと思う。

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