2013年4月1日月曜日

重版出来!第1巻(小学館)

著者:松田奈緒子 出版社:小学館 発行年:2013年 本体価格:552円
 けっこう本屋さんなどにも「重版出来」と貼り紙がしてあることはある。ただし読み方は「じゅうはんしゅったい」が正しく、「じゅうはんでき」は誤り。本文の版面を初版のまま奥付など一部のみ変更して増刷する。とある名門出版社に入社した柔道部出身の「黒沢」が一応主人公となる。ただ物語そのものは、黒沢は「入社」する前も後も変化しないので、けっこうくたびれ加減のおっさんたちの「変化」を中心に展開していく。
 「オワコン」(終わったコンテンツ)というネットスラングに衝撃をうけるベテラン漫画家やら、かつて発刊されていた雑誌が廃刊になったことを受けてフリーで活躍するある編集者など、リアリティ満載の設定。営業部や書店店員をまきこんだ販売促進など、実際に昔も今もおこなわれているプロモーションが描かれる。「船を編む」という地味な作品が映画化されるようになったのも、もともとは書店を基盤にした地味な販売促進が実を結んだ結果ではなかったか。かつての「編集王」は、ボクシングを途中で諦めて漫画編集者をめざす男が主人公で、最初から最後までどことなく哀愁が漂う展開だったが、この「重版出来!」は新人女性編集者が希望に燃えて最初から明るい展開。どっちがどうということではなくて、合わせて読むとさらに面白い。

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