2013年4月12日金曜日

フランス革命(岩波書店)

著者:遅塚忠躬 出版社:岩波書店 発行年:1997年 本体価格:820円
 「フランス革命はブルジョワ革命である」…とよく聞いたものだが、「ブルジョワ革命」が具体的にどのようなものだったのかは、この本を読むまではイメージできなかった(ちなみにこの本では「市民革命」という用語を用いない理由なども説明してくれている)。
 昔はフランス革命というと、明るく希望にもえた歴史的出来事といったイメージが流布していたが、最近ではロベスピエールの恐怖政治や、ナポレオンによる独裁政治などもひとつの流れとしてとらえ、明暗をきっちり客観的に評価するようになってきている。この本でも、フランス革命の歴史的な捉え方を2つ紹介したあと、貧しい農民の増加や貧富の格差、国家財政の破綻などの要因を検討して「フランス革命は劇薬説」をとる(そのほかの可能性にも言及しているところが好ましい)。
 フランス革命が世界史の教科書のなかでも重要な事項として説明をさかれているのは、単なる歴史的事実というだけではなく、たとえばロベスピエールがとなえた生存権の優位という考え方が、日本国憲法25条と深い関わりをもっていたり、あるいはアッシニャという紙幣の乱発によるインフレーションが食料価格の高騰を招いた事象が1985年の金融緩和によるバブル景気とオーバーラップしたりといった現代に通じる問題点と解決策の材料提供にもなっているからだ。またフランス革命の暗いネガティブな部分をロシア革命がなぞっていったことも想起されるべきだろう。このジュナイブルの本、わかりやすい語り口でかなり高度な内容を平易に解説してくれている。社会人が読んでも学ぶところ大で、しかもなおかつ面白いこと間違いなし。

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