2013年4月22日月曜日

アベノミクス大論争(文藝春秋)

文藝春秋編 出版社:文藝春秋 発行年:2013年 本体価格:750円
 インターネットが発達した結果、ある程度経済学的な論争の結果がみえた段階で評論家の責任も追求可能となった。民主党政権の是非についても3年前の論評と現在の論評とは、ウェブ上で簡単に相互検証できる。その分、経済評論家の責任もアナログ時代よりはるかに重くなったといえる。
 この本はわずか750円の価格で、アベノミクスの金融政策の是非、リフレ政策の有効性、財政政策の問題点、領土問題、憲法改正について概略を知ることができる利便性の高い内容となっている。金融緩和によって(予想を超える規模の金融緩和によって)、期待インフレ率が上昇し、消費や投資が促進される結果、賃金も上昇していくだろう…というのがアベノミクスの主な論調だが、これに対する批判としては、①金融緩和によって期待インフレ率が上昇するか、またそれが維持されるかは不明②国債価格が暴落するリスクがあるといった批判がある。意外に思った以上にアベノミクスに懐疑的な経済学の先生方が多いのと,財政政策は一定規模にとどめておかないと財政赤字がさらに膨らむ可能性があるという懸念が多い。
 4月21日の日本経済新聞でもG20で日本の財政問題を懸念する他国のコメントが紹介されていた(名指しではないがいきすぎた通貨安誘導を憂慮する声もある)。他の先進諸国やG20かたりからすでに金融緩和が近隣窮乏化につながりかねない懸念や国債価格の下落への懸念がでており、アベノミクスの3つの柱のうち①金融政策と②財政政策については、一定のストップがどこかでかかりそうな気配である。さらに③成長戦略はかつての小泉内閣のような規制緩和路線がメインになりそうだが、この効果がでてくるのには10年ぐらいかかりそうだ。また規制緩和した事業分野が必ずしも成長分野になるかどうかはわからないというリスクもある。とはいえ、ここ数年、あまり代わり映えのしない経済政策が続いていた。二度目の安倍内閣で小泉内閣を超える成長戦略が描けるかどうかは、ちょっと楽しみだ。

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