2011年4月21日木曜日

カラ売り屋(講談社)

著者:黒木亮 出版社:講談社 発行年:2009年 本体価格:724円
経済小説の独特の語り口がイヤになり、いっときまったく読まない時期が続いたが、黒木亮の経済小説は面白い。三和銀行のロンドン支店での勤務経験や総合商社での勤務経験が小説に反映されているからかもしれない。フィクションであっても細部に妙なリアリティを感じる。この本では、企業の経営実態を独自の調査で明らかにして株価の暴落を見込んでカラ売りをあびせるカラ売り屋、地域活性化事業にからんで村おこしを図る村おこし屋、開発途上国市場にシンジケートローンをしかけるエマージング屋、経営破たんしたホテルの民事再生に取り組む再生屋の4つの中篇が納められているが、個人的にはシンジケートローンを取り扱ったエマージング屋が面白かった。国際協調融資の舞台裏が描写されているが、エクセルで金利を見積もり各国の金融機関と調整を続ける主人公の姿がリアルである。それ以外は民事再生に取り組む弁護士などにリアリティを感じるが、国内の経済事件よりも国際的な経済事件を取り扱った題材のほうが主人公が生き生きしているように思える。先物売買や詐欺罪、民事再生法の具体的な適用などを学習するにもいい題材ではないかと思う。

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