2011年4月12日火曜日

リフレクティブマネージャー(光文社)

著者:中原淳 金井嘉宏 出版社:光文社 発行年:2009年 本体価格:900円
一泊二日のスケジュールで札幌出張のときに携帯していたのがこの本。電子機器の使用が制限される飛行機内ではパソコンや携帯電話よりもアナログな書籍のほうが使い勝手がいい。思いついたことは新書の余白にでも記入すればいいわけだし。アクション(行動)とリフレクション(内省)の相互作用を重視するという趣旨だが、それにさらに経営学と教育学のコラボレーション的な要素もある。アクションがリフレクションに先立つというあたりが念押しされているが、学者はともかくビジネスパーソンは考えるよりも動かなくちゃ…という面がある。31ページあたりの「誰もいきたくないカラオケ」というエピソード、なかなかいい。「マネージャー」の役割ってなに、っていうと、経営者ほど明確ではなく、また一般従業員とはまた違うという微妙なロケーション。権威主義的なマネージャーというのは百害あって一利なしだが、かといって何もしないってわけにもいかない。どうすりゃいいんだということで「リフレクション」の出番になる。まあ順当にいけば通常業務では黒子的な役割でいい、例外的事象にのみ乗り出すという展開が原則論だと思うが、それにふみとどまらないのがこの本の面白いところ。
だがそれと同時に読み終わったあとに感じたのは、けっきょく複雑に物事を分析して考えていても実際には現場はもっと複雑な原理で動いており、学問的には正しい…としても実務的にはとにかく回転させなきゃだめなんじゃん、てな弱点は常にあるということ。学問的には根拠はなくても「孫子」とか「人生論」的なシンプルなメッセージのほうが実は学問的な考察よりもヒューリスティックに役立つ…という部分がかなり多い。教育学がもしビジネス書籍などでも展開できるような、たとえ精緻でなくても正しくない部分があっても8割がたの問題解決に役立つようなシンプルな命題を打ち出せる…というところまでいかないとなかなか実務社会に教育心理の研究成果などは浸透していかないのではないか。企業内部の問題は古くて新しい部分がある。そしてもっとも必要なのはシンプル(2~3行のフレームワーク)で明確なフレーズだ。「アクションとリフレクション」という2つの言葉で要約してしまうのは大胆すぎるかもしれないけれど、でもこのフレーズこそがこの本の最大のポイントではないかと思う。

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