2011年4月20日水曜日

福島原発人災記(現代書館)

著者:川村湊 出版社:現代書館 発行年:2011年 本体価格:1600円
帰宅途中の書店で平積み。内容を立ち読みしてすぐ購入、一気に読み終わる。2011年4月25日発売となっているが、それよりも早くに書店に出回り、しかも平積み。緊急出版というのにふさわしいスピードだが、内容も過激。おそらく訴訟も辞さないという著者の覚悟だと思うが、原子力発電関係のウェブから引用を思い切った引用、さらに厳しいコメント。エッセイストの岸本葉子さんや内田春菊さんの名前まででているが、これはちょっと原子力「ムラ」の一員とするには、無理のある方々ではないかと思うが、日本原子力技術協会や原子力産業協会の理事の名前など、後世の資料としても使える内容。都合の悪いウェブページはおそらくこれから削除されていくだろうから、この本でそうした「都合の悪い」内容を紙媒体にまとめて残してもらえるのはありがたい。各ウェブでは福島の事故についていろいろな論議がなされているが、「原子力推進派」の団体に誰が名前を連ねて2011年の3月~4月にどういう言動をとっていたのかが克明に記録されているのはありがたい。この本は、今後20数年は歴史の資料となるだろう。各種のレポートもどさっと掲載されているが、地震や津波に対する安全措置についてなど、専門家や安全委員会の識見にはおそるべきものがある。歴史の検証をまつとはいっても、ウェブはやはり一過性のもの。こうして書籍となり、それに対する反論やあるいは「訴訟」というプロセスそのものが今後の原子力発電の事故抑制につながる。老朽化した福島第一原発がなぜ使用されつづけてきたのかその経済的メカニズム(固定設備は買い換えないでコストを抑え、その分安全性は犠牲にする)や、二酸化炭素の増加とプルトニウムの漏出という選択の結果があきらかな問題まで、「常識」をあらためて取り戻すのには最適の一冊。ただし過激な論調すぎてかえって「ひく」読者もいるかもしれないが、それはま、こういう状況だから…。

0 件のコメント: