著者:茂木健一郎 出版社:PHP研究所 発行年:2008年
「完成度の高い仕事には拡散と収束が共存」している…というのは最初なんだかな、と思ったが、実体験を積んでみるとなるほど、と思う。完成度が高い仕事、私なりにいえば論点が凝縮されて説明や理由付けがしっかりしている仕事は、遠くから離れてみた俯瞰的な観点と小さく細かく見ていく詳細な観点と両方を必要だ。俯瞰的な観点からするとexcelが有効なツールになりうるが、詳細な検討という観点ではアナログなチェックが欠かせない。両方そろって全体のバランスがとれた仕事が完成度の高い仕事ということになる。また「経験×意欲+準備」という公式もかなり有効なツールで、意欲も経験もない仕事の場合には準備をかなり入念にやることで完成度を高めることができるし、経験が積んである仕事の場合には、意欲がなくてもある程度まではまかなえることもわかる。また偶然性(セレンディピティ)というのはまだ科学的な説明はされていない現象ではあるが、「行動」して情報や知識に「気付いて」、さらに「受け入れる」という3つの状態でセレンディピティがうまく発揮できるというのも納得。偶然にみえて実は必然に近い偶有性というのは当然現実にありうる。論理的に考えて「こうなるはずだ」という気付きはもはや偶然ではなくて必然に近い。それを活用するのもしないのもセレンディピティを理解しているかいないかの違いとなってあらわれる。
細かなスキルではなく、むしろ細かなスキルに通じる脳の根本的な「現象」(というか機能?)についての仮説を提示する本。「根拠なき自信」も有効性なども含めて著者の独断もおそらく相当あるとは思うが、現実の場面で有効利用できる著述が多く、「生活術」と並んでお勧め。
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