2009年7月26日日曜日

天才!(講談社)

著者;マルコム・グラッドウェル 訳:勝間和代 出版社:講談社 発行年:2009年
 統計学的に正規分布から大きくはずれた値をしめす「アウトライアー」、いわゆる「天才」はどうやって生み出されてきたのかを分析する本。もちろん努力や素質も必要な条件ではあるが、「環境」「時代」をとおして分析してみるとどういう仮説が導き出せるかを検討した本。あくまでこの本で提出されているのは仮説にすぎないが、企業の破産事件などを扱うユダヤ人弁護士の成功は、「長年、ある技能に磨きをかけてきたところ、それが、とつぜんとてつもなく重要になったというわけだ」(148ページ)という結果になる。自分が想像している以上に「生まれるタイミング」や環境が重要な因子であり、さらに「10,000時間の法則」により、10,000時間の鍛錬が一つの技能を高めるという前提にたてば、ハンブルグ時代のビートルズもこの10,000時間の鍛錬をこなす準備期間だったと分析される。
 10,000時間の恩恵を受けられるか受けられないかが、一つの分岐点になるわけだが、読者としてとれる行動は2つある。仮説を受け入れて、自分にとっての「好機」を探索すること、そしてもう一つは、「才能に磨きをかけて10,000時間を費やす努力をすること」。無力感におそわれる読者もいるかもしれないが、著者はけっして「天才」の出現が「環境」「タイミング」にすべて由来するとは考えていない。いかに「10,000時間の鍛錬」を特定のスキルにかけることができるかどうか…が分岐点と考えているのだ。タイトルは「天才!」だが、けっして達成不可能な目標ではない、ということもこの本を読むとわかってくる。

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