2009年7月26日日曜日

影響力の武器(第二版)(誠信書房)

著者;ロバート・B・チャルディーニ 翻訳:社会行動研究会 出版社;誠信書房 発行年:2007年
 カバーの色が独特で書店では地味な扱いだが、それでも確実にロングベストセラーになりつつある社会行動学の本。多様化する現代では「こういうことがあれば、こういう行動で…」という固定的行動パターンが主になっており、それを利用した「影響力」の行使がある、という流れ。たとえば「コミットメント」という章を読むと映画「イースタン・プロミス」で自分たちの組織に加えるべきかどうかという面接で刺青を調べる儀式があったのを思い出す。覆面捜査を防止するために、体中に理由のある刺青を彫ることによって、その忠誠心を試すと同時に「ここまでやったのだから」という脱退などの行動を防止する。これがコミットメントで、なんらかの投資や博打を始めてなかなか抜けれない理由もこれでよくわかる。「社会的証明」というとやはり権威のある学者のコメントがあると新聞記事がかなり「格上げ」されて見えてしまうという効果があるだろうか。これは「社会的証明」のほかに「権威」という要素も含んでいる。そしてスーパーや百貨店などでよく利用されているのが「希少性」。人間は希少性が強調された商品にはかなり購買意欲がそそられる。その典型的事例は「ウェブでも量販店でも販売していないスピーカーで限定20台」という広告をみたときに実感した。「今、ここで」決断しないとこのスピーカーは入手できないかもしれない…という購買意欲をそそる方法だ。
 購買や消費をメインとしたこれらの手法については著者は「本当にいい商品であるならば」その影響力の行使の正当性を認めるが、あくまで「不当な場合にはノー」という権利と知識を訴えることにテーマがおかれている。だから消費者として行動する場合にも販売業者として行動する場合にも「本当はどうあるべきなのか」という倫理感をもってこの本を読むべきだろう。
 章立てがしっかりしているので、この本の内容をチャート化して、現実の事象を「これは希少性を利用したもの」「これは社会的証明を利用したもの」と分類の指標にもできる本。翻訳もわかりやすく歯切れのいい日本語で読みやすい。さらに膨大な参考文献が巻末に付録されているのが印象的だ。

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