2009年4月24日金曜日

獄窓記(新潮社)

著者;山本譲司 出版社:新潮社 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆☆
 単行本はポプラ社、この文庫本は新潮社からの出版となる。30代で国会議員に当選した著者は秘書給与詐取事件で実刑有罪となり服役。そして服役中の刑務所の中でみた光景を淡々とつづったのがこの「獄窓記」。監獄もの、刑務所ものは非常に好きなジャンルで、しかもこの著者の場合、国会議員から犯罪者へといった極端なコースでの実刑判決。そして刑務所の中では障害を負った同じ服役囚の介助役を務める。有罪を有罪と受け止めて、さらに淡々と俗世界をみつめるような書き方が心地よい。ただ著者の人徳をしのばせるのは弁護士や奥さんなどの身内がしっかりと脇を固めていること。地位ではなく人格で人と人とのつながりを築いてきた著者だからこそこの逆境にあっても問題点を発見し、さらに改善につとめようという意欲にもえたのだろう。刑務所の「福祉施設化問題」といった鋭い指摘もあり、矯正施設とはいかなるように構築すべきか…といった問題点も浮かび上がる。そしてなによりもノンフィクション作品としてもエンターテイメントとしても優れた語りぶりが魅力的だ。政治家として再復活する気持ちは著者にはないようだが、その代わりNPO法人そのほかでの社会活動家として新たな人生を切り開いている様子である。文筆業としてもさらにこの作品を超えるノンフィクション作品が期待される。

0 件のコメント: