2009年4月9日木曜日

クラウド・コンピューティング(朝日新聞出版)

著者:西田宗千佳 出版社:朝日新聞出版 発行年:2009年 評価:☆☆☆☆
 サブタイトルが「web2.0の先にくるもの」とあるのだが、気がつかないままにweb2.0は日常生活の中に溶け込んでしまった。技術の進歩とその利便性をすぐ生活に取り入れてしまうそのスピードの速さ。それはVISTAがあまり人気を博していない状況と早くもメモリ1Gでも軽やかにうごく新しいOS「ウインドウズ7」の発表を急ぐマイクロソフトと動きが重なる。パッケージ型ソフトウェアの魅力が乏しくなってきているのは事実で、すでにやりたいことのほとんどはウェブアプリで可能な時代。何もパッケージ型ソフトウェアをあえて購入したり、そのバージョンアップにつきあう必要性はない。むしろウェブに常にリンクして、ネットの中にデータもすべて保存し、ネットの中でデータも編集してしまう…そうした時代に個人も突入したのだと思う。どこからでもいつでもネットからデータを取り出せる…そうした「クモ」のようにはりめぐされたウェブの世界がクラウド・コンピューティングだ。マイクロソフトは2010年にもオフィス2007の次のオフィスセットの発売を予告しているが、従来のパッケージソフトウェアのほかに無償のソフトウェアの発売も予告している。これはgoogle documentをライバルとしてみたてた戦略だろう。ajaxといった新しい技術も実際にgoogle mapを使っていると「なるほど」とすぐわかるように内容が構成されているほか、従来とは比較にならないほどの容量をそなえたgmailやskydriveなどの様子をみていると、なるほどこれが企業バージョンになればsaasになるのか…とうなづける次第。現状分析をきわめてバランスよく著述しているほか、データの確実な保存こそがビジネスとして成立する未来も予測してくれている。mixiを実際にはじめている人がweb2.0をまっすぐ理解したのと同じで、外付けHDDではなく、無料のギガストレージサービスを普通に使っている日常生活を送っている人ほど、著者のいわんとすることがすぐ理解できるような造りになっている。難しい専門用語も適切に説明されているため、「今」を理解するにはきわめて有用な新書だ。

0 件のコメント: