2009年4月23日木曜日

ウィニーー~情報流出との闘い~(宝島社新書)

著者:湯浅顕人 出版社:宝島社 発行年:2006年 評価:☆☆☆
 発行年がやや2006年と古いことは古いのだが、それでも未だにファイル交換ソフトを使った情報流出事件は発生している。P2P方式のファイル交換では一つのパソコンがウイルスに感染するとファイル交換と一緒にウイルスも増殖していく。流出事件が後を絶たないのはこうしたP2P方式によるファイル交換の特性を生かしたウイルス考案者の頭のよさを物語る。情報セキュリティのレベルが今後の企業取引に大きく影響する…という著者の読みは正しかった。クラウドコンピューティングとよばれる現在の状況ではパソコン内部にデータを保管するよりも他のプロバイダなどが提供するサーバにデータを保管することが増えてきている。利用者にとってはそのデータ保管者の情報セキュリティ能力がアクセスするかしないかの判断水準となる。これは企業取引でも同じだろう。この本ではウィニーを導入していないパソコンでもウィニーウイルスに感染するリスクが説明されており、自分はファイル交換ソフトを入れていないから安心…というわけにはいかない実情も説明されている。著作権についてもポイントを「複製権」と「公衆送信権」にしぼりこんだ説明は非常にわかりやすい(164~166ページ)。firewallでも防げないウィニーの怖さ。その怖さは2009年を迎えた今かなり多くの人間に認識されてはいるが、それでも別のファイル交換ソフトshareの事件なども発生しており、システムとしては優れているファイル交換ソフトのもう少し完全合理的な使い方をこれから考えていくべきだろう。もう少しバグやウイルスさえなければこのファイル交換という考え方はもしかすると別の展開をみせていたのかもしれない…とそんな気さえしてくる。

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