2009年4月16日木曜日

若者のための政治マニュアル(講談社現代新書)

著者;山口二郎 出版社;講談社 発行年:2008年
 サブタイトルが「民主主義を使いこなすための10のルール」となっており、50歳を迎える著者が「若手」に向けた政治メッセージというスタイルになっている。一応形式的に読むこともできるが、民主主義を使いこなすための「ルール」の一つに「頭の良い政治家を信用するな」という項目がある。おそらく著者自身もこの本を書きながら、「自分のいうことをすべて真に受けてしまう人がいたらそれも怖いなあ」という感想を盛ったに違いない。ところどころに理想主義と現実主義の微妙なバランスが描写されているのだが、形式的なメッセージを発しつつも、「それにまどわされるな」「自分自身の考えをさらに構築せよ」という深いメッセージを感じる。抽象的な用語を嫌い、「責任」という言葉よりもまず権利行使を考えようとする態度は、民主主義では「言わないと始まらない」という面がある以上当然だ。だが、「無責任でもいいじゃないか」とも著者は説いているわけで、要は一定の「思考停止」さえしなければ形式的な投票だとか意思表示などは二の次ではなかろうか…などとも思ったりもする。30代で北海道大学に政治学の天才がいると大評判だった山口先生が、学者としては中堅というか大家の世代ともいうべき50代へ。時代の流れと変化は1960年代から50年を切り取ってみるととてつもなく激しいが、表層的なマークはあれこれ変わっても人間の中身や考え方というのは深くみていけばいくほど時代の変化ほどには変わらないものなのかもしれない。箇条書きを逐条的に読むのではなく、むしろ変則的に読みこなしていくべき書籍ではないかと思う。

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