2009年3月22日日曜日

裁判長!これで執行猶予は甘くないすか(文藝春秋)

著者;北尾トロ 出版社:文藝春秋 発行年:2009年
 前作に続く地裁傍聴記録。判決そのものよりもプロセスや被告人や検察官、弁護士、裁判官などのキャラクターの描写が深みをます。だれもが知っている有名な殺人事件の傍聴記録もある。検察官の冷静な事件の検証とうらはらに「理解に苦しむ事件」も多数。「内向的で一直線な女性」がおもいつめて男性のつきあっていた女性をカナヅチでボッコボコ。東京駅で万引きが発覚し、追いかけてきた被害者を殺害した男性の傍聴記録(被告人は無期懲役が確定)。「電波系」の殺人事件や元婦警の幼児放置殺害事件、歴史的性犯罪集団スーパーフリーの身勝手な論理(懲役3年)、40歳女性の売春事件(懲役4ヶ月保護観察付の執行猶予2年)などそれぞれの事件に被害者と加害者以外の証人も加わって、ちょっとした人間模様。再犯の可能性や「芝居」の可能性なども著者はコメントし、やや辛口ではあるが、人間ドラマというのはおそらくこうしたシビアな展開と「いい加減」な人間関係とのからみあいなのだろう。どの事件も非常に興味深いのだが、これが裁判員として実際に立ち会った場合には、判断は難しい。刑罰の相場というものは当然あるのだろうが、事実認定以外の証人の発言をどう解釈するか。有罪確定の被告人にたいして情状酌量をはかる弁護士の弁論をいかに見破るか。なんどか裁判の傍聴にいけば一定の判断はくだせるかもしれないが、この本での教訓は「男の涙も女の涙も裁判所では信用できない」。

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