2008年6月29日日曜日

小説ドラゴン策阿3~挑戦東大模試編~

著者:里見蘭 原作:三田紀房 出版社:講談社 発行年:2006年
評価:☆☆☆
 漫画とは粗筋が違ってくるみたいだが,やはり小説の中で展開される考えるツールは非常に役に立つ。メモリー・ツリーと表現されているがいわゆるマインドマップの使い方も紹介されており,高校生が読んでも社会人が読んでもとくにこの第3巻は非常に役に立つだろう。物語としても非常に面白い。
 マインドマップの効果については最近個人的にもメモをとるときにキーワードを「連合」させたりして活用している。大量のキーワードを相互に関連づける簡単なツリー形式だが箇条書きでメモをするよりもはるかに記憶に定着するのは事実。さらにより細かい知識と関連づけることで「精緻化」も可能となるが,これもツリーをそのまま枝を伸ばして行けばいいので,特殊な訓練ももしかすると必要かもしれないが,日常生活でツリー状に用語を関連付けて,より詳しい内容をさらに関連付けるようにしてマッピングする,というだけで記憶力は格段に向上する。コンビニエンスストアのチェーン展開の事例なども紹介されており,1号店で試行錯誤したノウハウを蓄積して拡大するとか,面白いノウハウがぎっしり詰まっている。小説もベストセラーになったようだが,それもうなづける内容だ。

高血圧の常識はウソばかり(朝日新聞社)

著者:桑島巌 出版社:朝日新聞社 発行年:2007年
評価:☆☆☆☆
「高血圧」関係の書籍を読むことが増えたのだが,それはなぜかというと自分が昨年の健康診断で血圧200を記録したためである。すぐ内科の病院にいって診察してもらい,昨日は最高血圧122最低血圧76.通常ではないかと思うが,高血圧状態のときには確かに後頭部がいたかったような気がする。で,最近は塩分控えめにすると同時に,カリウムを意識的に摂取するようにしているが,それはこの本の影響が大きい。著者はメタボリックシンドロームを測定する基準の中でもっとも重視するべきは血圧と団地する。脳卒中,脳梗塞,心不全,腎不全などの血管病とリンクする可能性がきわめて高いからだ。ウエストの基準値については医学的な根拠はまだないというので,やはり血圧の管理には注意するべきなのだろう。一日の間に血圧が変動するので職場高血圧に注意するように,とか運動療法のすすめ。そしてミカンやリンゴをなるべく摂取して,塩の代わりにお酢や香辛料(七味トウガラシ?)の摂取などを具体的に教えて貰える。がん,心臓病,脳卒中が日本人の死因のトップを占めるが,そのナンバー2と3が血圧に関係する。高血圧の人も低血圧の人も血圧の管理,注意したほうがいいですよ(血圧200を記録した自分が言うので,血圧が下がるといかに私生活も仕事も楽になるかは身をもって実感する…〉。
 

A4一枚勉強法(日本実業出版社)

著者名:三木雄信 出版社:日本実業出版社 発行年:2008年
評価:☆☆
 A4サイズがいろいろ応用可能なサイズというのは同感。目標を設定して副次目標をブレイクダウンするとか,この当たりは他のビジネス書籍でも紹介されているし一般的な方法だと思うがこれをA4と断定してオリジナルの書式を読者のみダウンロード可能にするというあたりが特典かな。人間の脳は大まかな情報を俯瞰してから詳細な情報を入手して理解するというあたりも同感。読書計画シートなどは本来,大きな説明をしている本から読み進めればそれにこしたことはもちろんないのだが,そうなると読書録を作成する以前に一定程度その分野の本を読んでおく必要性があることになる。それは少々面倒だ。
plan/do/seeという3段階で考えると,おそらく小さな目標ほどこの三段方式は役に立つ。だが人生計画とか大きなプロジェクトになればなるほど,seeなどはもちろんできないので,見込みの部分を残しつつ,その場その場でざっくり判断しなくてはならないのもまた事実。大まかな指針を心の中で立てたあとは適時に修正を加えていくのがベストでその限りにおいては別にA4サイズにこだわりすぎてもいけないのでは…というのが読後感。この本ではネットカフェやレンタルデスク,勉強特性(実務と勉強の関連付け)といったA4シートとは違う部分のノウハウのほうが面白い。

文房具を楽しく使う~ノート・手帳編~(早川書房)

著者:和田哲哉 出版社:早川書房 発行年:2004年
評価:☆☆☆
 2004年発行ながらも地道に増刷が続いているのは,おそらくロディア,アムパッド,モレスキンなどのノートについて著者の工夫が積み重ねられているせいか。複数のメモやノートを組み合わせることを著者は「つながり」と表現しているが,ロディア愛好者にとっても「なるほど」とうなづく一言。最初から捨てることを意識してロディアを購入しているため,ロディアから別のノートに「転記」することが前提となる。私の場合,それが「超整理手帳」だったり,パソコンだったりするわけだが,それがモレスキンのノートであったりバインダー式であってもぜんぜんかまわないわけだ。個人的に趣味に属する部分のロディアのメモはほとんどウェブに上げてしまう。ブログの形であげるケースもあればmixiの非公開やgoogleの非公開の形で上げるケースもあるが音楽や映画,読書のメモなどは,ノートに転記しても後日検索するのが面倒。その点googleだと,ブログの中での検索も非常に便利なので,メモがそのまま記事になるという次第。業務関係だとさすがにノートへの転記が必要になるほか,パソコンでは上書更新が非常に面倒。数値や住所は結構変化するので実はパソコンに向いていないのではないかとも密かに思っている。年賀状の印刷だけであれば,年末に手書きで修正したノートの部分のみデジタルデータを更新するのが一番便利なので,住所録もまたしっかりしたノートや持ち歩き可能な住所録にまめに転記しておくのが一番ではないかと思う。仕事のスケジュール表や資料などについても別のノートが合ったほうが良い。資料などはとくにかさばるがこれはA4のクリアファイルに一時保存しておいて永久保存に値する書類のみノートに貼るといった作業がいいだろうと思う。資料が増えすぎても検索できなければ保存する意味がないので,保存するべき資料を検索しやすい形で置いておくというのが一番だ。その意味でもメモからノートへ,そして生活や業務からノートを参照できるというシステム作りが大事だろう。日本の文房具も使いやすいが海外の文房具も視野に入れるとこうした検索や整理の作業が格段にしやすくなる。書ければなんでもいいという立場もあるが,やはり試行錯誤すれば試行錯誤しただけの価値がでてくるのがこうしたノートの類。本書は海外ブランドのノートについて紙質や綴じ方などについても説明してくれているので工夫や改善をしたい人にはぜひお勧めの本。

公務員の異常な世界~給料・手当・官舎・休暇~(幻冬舎)


著者:若林亜紀 出版社:幻冬舎 発行年:2008年
評価:☆☆☆☆☆
 いろいろマスコミでも話題になった本。読んで見てよくここまでフリーランスの著者が取材もして出版もできたなあ,というその勇気に感嘆。公務員の労働組合については色々思うところがあったが,その疑問もこの本で解消。北海道庁と社会保険庁の労働組合が「最強」として紹介されているが,労働組合に異議を唱えると左遷される事例まであるとなるともう労働者の枠を超えている。公務員制度の問題点を詳細に調べ上げた書籍だがエンターテイメントとしてももちろん面白く読める。「感覚」がとにかく民間企業とずれている理由がわかるため,身近に公務員の人がいる人は話題を選ぶときにもこの本をあらかじめ読んでおくと便利だろう。手当の話など当然,楽しい席で公務員の人がいる前でだしてはならない理由もこの本で分かる。
 こうしたフリーランスのジャーナリストが活躍できる基礎としてやはり情報公開法の成立は大きかった。この法律で情報開示が進み,積極的な取材の姿勢があれば,フリーランスのジャーナリストでもここまで調べ上げて本に出来る(ただしその勇気があれば,の前提だが)基礎が出来上がった。大手マスコミの記者ではおそらくここまでは知っていても書けないと思う。記者クラブからはじきとばされたら,記事のネタそのものに困ってしまう。一方,フリーランスの若林氏はそもそも記者クラブとは関係ないから,本音で勝負が出来る。世の中は確かに変わったが,情報公開法を積極的に利用してこうした勇気あるルポを書いてくれる若林氏の次の作品にも期待するところ大である。

愚者の道(角川書店)

著者:中村うさぎ 出版社:角川書店 発行年:2008年
 文庫本の発行が2008年ということで単行本は2005年発行だ。つまりこの本の内容は中村うさぎさんが46歳~47歳のころの話がメインとなる。
「わかりやすい文章」と「わかりにくい文章」と2つに分類すると「わかりやすい文章」のほうがもちろん結論は明確だ。大学の小論文の試験などは「わかりやすい文章」のほうがおそらく評価は高いだろう。だが実際に現実を見て何かを書くときに小論文の試験ほど簡単に結論を出して理由を述べる…といった構成ではかえって現実の複雑さと整合しなくなることが多くなる。というわけで私自身もかつては,「結論を出して,理由を出してさいごにまとめる」といった形式の文章は,そういうことが必要な場面以外では書かないことにしている。「わかりにくい文章」は筆者が混乱している証拠ともいうが,その通り。混乱しているからこそ書いて物事を整理したい。で,それを安易に結論づけたくないから,断定もしたくない。「~と思う」とか「~のようだ」といった曖昧な文末は小論文の試験では使わないほうがよいが,実際に世の中で断言できることはほとんどない。小論文のテクニカルなことは実際にはあまり使えないスキルなのだ。で,この本は極めて難解でしかもわかりにくいのだが,それでも伝わってくるものがあるのは,筆者自身が「混乱」している様子そのものが一つの「芸」になっているからだ。「愚者とは何か」という定義づけから始めようとしているのだが,その定義すら実は成功しているとは言いがたい。ブランド品の買いアサリからホストクラブへの入れ上げ,そして整形手術と消費の権化のように言われていたがご本人は消費者という分類すら否定し,自らを愚者とする。そしてその愚者には「破壊の暗黒神」(穴のあいたバケツ)が心の中に住んでいる。妙に哲学的になってくるのだが,筆者の破壊の神は,商業主義的な文章すら拒み,2005年の夏のデリヘル体験を告白する。「価値」という言葉が頻出するのだが,「価値体系」や「分類体系」の枠組みを拒否する姿勢は私にとっては爽快でもアル。ただ世の中にはこの本を読んでかえって不愉快に思う人も少なからず存在するのだろう。で,「愚者の道」。それは中村うさぎ一人が歩む道だろうか。いやいや。金額は違えど,また人はデリヘルもやらなければホストに入れ上げる人もまた比率からは少ないかもしれが,大方の人間は「愚者」なのだ。「愚者と他者」と2つを並列して自分を「他者」だと認識している人間は,愚者でも賢人でもない「人々」という集合名詞でくくられる中の一つのカッコでくくられる要素にすぎない。

世界の猟奇ショー(株式会社幻冬舎)

筆者:唐沢俊一+ソルボンヌK子 出版社:幻冬舎 発行年:1999年
評価:☆☆☆☆
 この「世界の猟奇ショー」の前編にあたる書籍があり,その名も「大猟奇」という本。現在は幻冬舎文庫にも文庫本として収録されているが,当時,文庫本ではなく単行本で購入して読んだ記憶がある。鮮烈なイメージとともに思いだす明治から昭和までの三面記事の「囲み」をクローズアップして取り上げた編集の「匠の技」。またそれをリアルに描くソルボンヌK子さんの画筆に圧倒された。その後,その単行本の続編が出ているとは知らなかったがこの「世界の猟奇ショー」は文庫本のみ発行ではあるが,事実上その続編と考えるべきだろう。いきなり頭山満とカイチュウのエピソードや「キミもこうして死ぬかもしれない」というブラックなエピソードから始まる。この世界がまたたまらなく面白いのだが人によっては途中で挫折するかも。でも面白いんだなあ…。個人的には。 前作では新宿2丁目のルミエールでの日常がさらっと書かれていたのだが,その後紀伊国屋書店の2階に上がるエスカレータから1階で談笑する唐沢俊一さんを目撃。漫画どおりの服装なのですぐわかるが,おそらくは相当膨大な資料を読破してその中からえりすぐりの話を特集していると思われるのだが,さらさらまとめたように見えてしまうあたりがこの異才の特技なのだろう。エロとグロを綿密に,かつ丹念に書き込むソルボンヌK子さんの画風もすごい。弟の唐沢なをきさんの作品は毎週,週刊アスキーで拝読しているが相当に「ダーク」な画面でこの御夫婦と弟さんの3人が集まって家族会議をする…となると,とてつもなく面白い家族会議になるに違いない…。エピソード自体がこの本の内容なので紹介はできないのだが,それでも「首なし美人の死体発見さる」(明治43年)のエピソードには違う意味で感心してしまった。平成20年の現在,「美人カリスマ証券トレーダー…」うんぬんのタイトルが雑誌の一部とブログの一部に掲載されたのだが,明治43年から事件が起きると「美人」とか「美女」という煽り文句をつける体質はあんまし変わってないらしい…あ,これはこの本の中身とは関係ないが,そうした脇路的な読み方もいろいろ可能なお徳用の本…。

2008年6月28日土曜日

ゼミナール現代会計入門第7版(日本経済新聞出版社)

著者名:伊藤邦雄 出版社:日本経済新聞出版社 発行年;2008

評価:☆☆☆☆☆

 全部で700ページを超える大作だが,これが入門書の中の入門書ともいえる。社会人から学生まで幅広い読者層を念頭において著述されたものと思われ,第1版とはもうほとんど全部内容が異なるほど改訂の度に手が加えられ,この第7版でも会社法や棚卸資産会計基準,20078月におこなわれた東京合意など最新情報が盛り込まれている。おそらく現在の状況からすると来年には早くも第8版が出版されるかもしれないが,この2008年で入手できることのできる最新情報が盛り込まれていて700ページ。価格は3500円だが非常に安いといえる。豊富な企業の実際のデータをもとに繰り広げられる財務会計の世界の広がりはまさしく複式簿記の入門から財務データから読み取れる深い世界まで読者をいざなう。包括利益についてもわかりやすく説明がなされ,為替調整換算勘定がなぜゆえに重要性を帯びてきているのかも理解できる。個人的には企業結合・事業分離等の会計が非常に面白かったが,興味のある分野のどこから読んでも読書のメリットを享受できる名著といえるだろう。

2008年6月24日火曜日

短期間で組織が変わる~行動科学マネジメント~(ダイヤモンド社)

著者:石田淳 出版社:ダイヤモンド社 発行年:2007年
評価:☆☆☆
 ビジネス書籍の平均価格はだいたい1500円から1600円の価格帯が一つの目安だがこの本も税込みで1680円。行動科学マネジメントについて筆者自身の体験もまじえて解説してあるので,お買い得の値段だろう。成果主義のアメリカがその限界にきづいて日本型マネジメントと取り入れたのに対して日本はこの10年間日本型チームワークから軍隊型マネジメントにどんどん変化していった。外資系企業的といえば聞こえはいいのだが実際には,年功序列的な配置から生産効率的なタイプの人事管理が中心になってきた。筆者はそうした2割の優秀な社員を優遇するのではなく,残りの8割のパフォーマンスを高めるほうが企業全体のパフォーマンスを上げると主張。そのために行動科学的な管理手法を持ち込むべきという論理の組み立てを行っている。感情やえこひいきを排除した「行動」にフォーカスをあてて行動の分析やチェックリスト,そしてポイントカードのような報酬の3段階での行動管理。行動分析から結果をダシ,その結果に貢献する行動をいかに継続させるかという点については頻繁にリインフォース(強化)という用語が出てくる。これは自分自身でも意識していたことだが人間はなんらかの報酬がなければやはり動かない(けっして金銭だけに限定されない〉。そこで言葉や態度でリインフォースを行うべきという実務に密着したアドバイスが行われるわけである。認知心理学で有名なスキナーも引用されているが,これは行動科学の歴史を振り返るための引用で急進行動分析学から応用行動分析学(1950年代),そして科学であるからには実験再現性が必要として信頼関係の重要性を科学的に実証していく。行動分析では望ましい行動をした人間に対してはかならずリインフォースし,マネージャーの仕事を会社のさまざまなプロセスを既存の資源から最適化するポジションと定義する。リインフォースは望ましい行動を継続させるための手段であり,人間も動物も一度リインフォースされれば行動が変化すると指摘。いかにして望ましい行動を自発的に行うべきか…といったマネジメントシステムについてわかりやすく解説して暮れている。結果を変えるには行動を変えるしかない,といったわかりやすい文章とわかりやすい図が魅力のビジネス書籍。論理的にも一貫しているし,やや重複して登場する専門用語は読者の理解度を深めるための配慮と思われる。感情的な自己管理ではなく科学的な自己管理のツールとして,この行動分析はかなり使える予感。

2008年6月23日月曜日

mixi究極マスター(普遊舎)

筆者:普遊舎ip!編集部 出版社:普遊舎 発行年:2007年
評価:☆☆
SNSと言う言葉を聞いてわかったようなわからないような気持ちだったが,実際にmixiに参加してみてその便利さとリスクに気がつく。うまく活用すればメールやウェブよりも個人情報を保護しつつ,さらに書きたいことをウェブに載せることができるが,マイミクシィやコミュニティなどに不用意に参加すると,思わぬ個人情報の流出の可能性もありうるというわけだ。モラルやマナーはウェブと変らないが,信頼できる人だけに公開できるという点では要ってい程度は制約がかけられているコミュニティの集積体。だがこれが次のウェブのあり方かどうかは,まだわからない。そうしたmixiに参加しているのが現在1000万人とされている。すでに出身中学や高校やクラブ活動,大学といったコミュニティにも参加したが,とてつもない数のコミュニティ。「指トマ」以上に同窓会そのほかに活用できるアイテムだが,ビジネスにもうまく活用すれば活用できる要素がある。思いつきをメモにして日記帳に「非公開」として一時保存することもできるだろう。一般的な活用方法や関連するダウンロードソフトなどもこの本では紹介されており,いわばマニュアルとしては500円という販売価格で,コンパクトに活用方法を知ることが出来る。出版社側では「本」というよりも「雑誌」という分類で発行しているようだが,今後実際のmixiのサービスがグレードアップするにつれて,この本もバージョンアップしていくと言うことなのだろう。