2008年6月29日日曜日

公務員の異常な世界~給料・手当・官舎・休暇~(幻冬舎)


著者:若林亜紀 出版社:幻冬舎 発行年:2008年
評価:☆☆☆☆☆
 いろいろマスコミでも話題になった本。読んで見てよくここまでフリーランスの著者が取材もして出版もできたなあ,というその勇気に感嘆。公務員の労働組合については色々思うところがあったが,その疑問もこの本で解消。北海道庁と社会保険庁の労働組合が「最強」として紹介されているが,労働組合に異議を唱えると左遷される事例まであるとなるともう労働者の枠を超えている。公務員制度の問題点を詳細に調べ上げた書籍だがエンターテイメントとしてももちろん面白く読める。「感覚」がとにかく民間企業とずれている理由がわかるため,身近に公務員の人がいる人は話題を選ぶときにもこの本をあらかじめ読んでおくと便利だろう。手当の話など当然,楽しい席で公務員の人がいる前でだしてはならない理由もこの本で分かる。
 こうしたフリーランスのジャーナリストが活躍できる基礎としてやはり情報公開法の成立は大きかった。この法律で情報開示が進み,積極的な取材の姿勢があれば,フリーランスのジャーナリストでもここまで調べ上げて本に出来る(ただしその勇気があれば,の前提だが)基礎が出来上がった。大手マスコミの記者ではおそらくここまでは知っていても書けないと思う。記者クラブからはじきとばされたら,記事のネタそのものに困ってしまう。一方,フリーランスの若林氏はそもそも記者クラブとは関係ないから,本音で勝負が出来る。世の中は確かに変わったが,情報公開法を積極的に利用してこうした勇気あるルポを書いてくれる若林氏の次の作品にも期待するところ大である。

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