2008年6月24日火曜日

短期間で組織が変わる~行動科学マネジメント~(ダイヤモンド社)

著者:石田淳 出版社:ダイヤモンド社 発行年:2007年
評価:☆☆☆
 ビジネス書籍の平均価格はだいたい1500円から1600円の価格帯が一つの目安だがこの本も税込みで1680円。行動科学マネジメントについて筆者自身の体験もまじえて解説してあるので,お買い得の値段だろう。成果主義のアメリカがその限界にきづいて日本型マネジメントと取り入れたのに対して日本はこの10年間日本型チームワークから軍隊型マネジメントにどんどん変化していった。外資系企業的といえば聞こえはいいのだが実際には,年功序列的な配置から生産効率的なタイプの人事管理が中心になってきた。筆者はそうした2割の優秀な社員を優遇するのではなく,残りの8割のパフォーマンスを高めるほうが企業全体のパフォーマンスを上げると主張。そのために行動科学的な管理手法を持ち込むべきという論理の組み立てを行っている。感情やえこひいきを排除した「行動」にフォーカスをあてて行動の分析やチェックリスト,そしてポイントカードのような報酬の3段階での行動管理。行動分析から結果をダシ,その結果に貢献する行動をいかに継続させるかという点については頻繁にリインフォース(強化)という用語が出てくる。これは自分自身でも意識していたことだが人間はなんらかの報酬がなければやはり動かない(けっして金銭だけに限定されない〉。そこで言葉や態度でリインフォースを行うべきという実務に密着したアドバイスが行われるわけである。認知心理学で有名なスキナーも引用されているが,これは行動科学の歴史を振り返るための引用で急進行動分析学から応用行動分析学(1950年代),そして科学であるからには実験再現性が必要として信頼関係の重要性を科学的に実証していく。行動分析では望ましい行動をした人間に対してはかならずリインフォースし,マネージャーの仕事を会社のさまざまなプロセスを既存の資源から最適化するポジションと定義する。リインフォースは望ましい行動を継続させるための手段であり,人間も動物も一度リインフォースされれば行動が変化すると指摘。いかにして望ましい行動を自発的に行うべきか…といったマネジメントシステムについてわかりやすく解説して暮れている。結果を変えるには行動を変えるしかない,といったわかりやすい文章とわかりやすい図が魅力のビジネス書籍。論理的にも一貫しているし,やや重複して登場する専門用語は読者の理解度を深めるための配慮と思われる。感情的な自己管理ではなく科学的な自己管理のツールとして,この行動分析はかなり使える予感。

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