2008年3月23日日曜日

マインドマップ図解術(秀和システム)

著者名:中野禎二、松山信之助 出版社:秀和システム 発行年:2005年
主にコンサルタント系統の方々が最初に使い始めて、現在は受験生の間でも「メモリーツリー」などとして世界史の知識の暗記や論文対策などにも使用されているというマインドマップ。最初は「?」の世界だったが、ついに情報処理専門の出版社もマニュアルを発売するのだからやはり効果はあるのだろう。価格が1冊1000円と割高ではあるが、まあ、手軽に作成方法を学習できるならば…。ただやはりこの本を読んでも中心概念を真ん中に書いて、そこから枝葉を伸ばす…という以外に他になにが特徴なのかわからない。発想術として利用するよりもむしろ知識の整理に使いたいのだが、市販ソフトだと箇条書きとさして変わらない図版になってしまうし。パソコンとの親和性が高いのもマインドマップの世界らしいのだが、もう少しどれだけ今の自分に有用なスキルなのか見極める必要がありそうだ。ただプレゼンテーションや会議録などには確かに論点のズレなどを正すのには有効そうな気もする。今までの会議録では話がどこに飛んでいたのかわからなくなる。マインドマップで論点をどんどん加算していく方向だと、発言の内容がどこの論点のどういう解決策になるのかが一目瞭然。この点は確かに有効なアイテムといえそうだ。

2008年3月18日火曜日

絶妙な「整理」の技術(明日香出版)

 「整理」「整頓」とはいっても何かいい方法はないかと常々考えている昨今、手軽に読んですぐに役立つ本はなかなか少ない。216ページにわたって、整理の方法が説明されているのだが、図が入っているのでその中から自分に仕えそうなスキルを取り出していくしかない。「使ったら元に戻す」というのは最近になって「結構使える」と実感。使いっぱなしだと本当に文房具などは場所を忘れてしまう。フローとストックに分けて道具や情報を分類して、フローは時間別、ストックはテーマ別に分類するというはなかなか…。会議やウェブなどで得た情報はフローだが、ためるんだったらテーマ別。たしかに1年、2年たったら時間軸ではなくてテーマで検索できるようにしておかないとまずいしなあ。で、まあ、いろいろとノウハウは紹介されているのだが、結局読み終わった感想としては、「人それぞれ」としかいいようがない。個人的には野口悠紀夫教授の「超整理法」をメインにしてA4サイズですべて保管し、そのファイルのうち重要と思われるものをクリアリーフにいれて整理していく方式をとっているが、A4に規格を統一して、クリアフォルダもA4で保管して逐次整理していくというのが一番あっている。ただしこれも人それぞれだろうから、最終的にはインプットしたものをどれだけアウトプットにまわせたか…がポイントになるのだろう。(信じがたいがすべての書類をスキャンして全部パソコンに入れてしまうという人もいるわけだし…)。

不動産は値下がりする!

著者名:江副浩正 出版社:中央公論新社 発行年:2007年
不動産の相場は金利と逆相関にある…というシンプルな命題からさらに地域ごとの不動産の価値や今後の価格動向を見極めていく。ここのところミニバブル的な活況を不動産業界は享受してきたが、建築基準法の改正や強気の土地の仕入れがここにきて契約率の低下に苦しむ結果になっている。どちらかといえば未来予測というよりも不動産の「今」と「これから」を緻密に分析したレポートといった色彩が強い。ただし不動産業界には厳しい話が続く。J-REITの説明も非常にわかりやすく丁寧だが、その行く末については筆者は必ずしも楽観的ではない。現状では、不動産価格の上昇にたいして消費者の所得の上昇がついていっていない。その結果、マンションの需要に結びついていかないといった状況になっているが、著者が指摘しているように郊外の物件から価格下落、そして中小のデベロッパーから「投売り」に近い状況になる可能性はきわめて高い。そもそも少子高齢化の時代、企業のスリム化、大学の移転の可能性などを考えると土地の供給は増えて需要は長期的には減少することになる。その間で「上がるものは上がる」わけだから、まさしくサブテーマとしてあげられているように「見極める目」が重要な時代になったといえるのだろう。将来の金利予測は日本銀行以外だれにも確実なことはいえないが、まさかいつまでもこの超低金利を続けていくわけにもいくまい。ごく少数の「値上がり物件」とかなり多数の「値下がり物件」という不動産価格の「格差社会」の到来をこの本は予測しているような気がする。

秘密結社(中央公論新社)

著者名:桐生操 出版社:中央公論新社 出版年:2007年
 「大事件の陰で見え隠れする秘密結社」という「秘密結社」の定義から始まり、フリーメーソン、イルミナティ、三百人委員会、テンプル騎士団、シオン修道会、トゥーレ協会、薔薇十字団などが紹介されている。グノーシス派、カタリ派、エッセネ派など過去の宗教教団についてもわかりやすい解説。どうしても個々の組織だけに言及された本だとどれがどういう特徴なのかわかりにくくなっているが、一種のカタログ方式でここまで要約・整理してくれると特徴が把握できて非常にわかりやすい。一種の簡略的な辞書としても利用できるが、残念ながら索引がついていない。主要参考文献が掲載されているだけに、索引もつけてほしかったなあというのが本音。新書ながら300ページを超える厚さなので、どれか何か調べようとしても目次だけから閲覧していくのはちょっと苦労する。「大事件」たとえばフランス革命などでも、確かにフリーメーソン的なロッジが階級をこえた結びつきを強めていった経緯はあるだろうし、エカテリーナ2世の伝記を読んでも「マソン」(フリーメーソン)に対する警戒感が記されている。あまりに過大評価するのも危険だが、かといって歴史の中でその影響力を無視することもできないというのがこの「秘密結社」という表に内部の情報がでてこない組織集団なのだろう。定価860円。電車の中でも気軽に過去の「秘密結社」の世界に入れるというのがメリットか。

2008年3月16日日曜日

ハリウッド・セレブ(学習研究社)


著者名:千歳香奈子 出版社:学習研究社 発行年:2008年
 「お騒がせセレブ」としてまずパリス・ヒルトン、リンジー・ローハン、ブリトニー・スピアーズらが取り上げられる。パリス・ヒルトンの場合には日本の夕方のテレビのニュースでも報道されたりしたが、リンジー・ローハンもたまにyahooのトップニュースでみかけたりする。昔は「キネマ旬報」などの記事をせっせと読まなくてはならない記事もあったがウェブで英米の俳優の情報も入ってくるようになったのは便利。さらにこうして新書サイズでまとめてくれると情報が整理されてわかりやすい。パリス・ヒルトンの流出したとされる「動画」は、活字になるよりも動画そのもののほうが流出して日本に来ていたような記憶も…。
 映画出演料ランキングも25ページに記載されており、これも興味深い。ジュリア・リバーツをリース・ウィザースプーンが抜いたとか、アンソニー・ホプキンスよりアダム・サンドラーの出演料のほうが高いとかいろいろ面白い数値が並ぶ。どうしても「話題性」が優先される中、アンジョリーナ・ジョリーの国連難民への取り組みやレオナルド・ディカプリオの環境問題への取り組みも紹介されると同時に、大好きなフランシス・マクドーマンドの整形に対するコメント「老いていくことを恐れて整形してはいけない。このまま10年たてば54歳の役を独占できる」(226ページ)などが紹介されているのも嬉しい。日本のニュースでもその不審な死が報道されたアンナ・ニコル・スミスについても追加情報が125ページから紹介されている。推定16億ドル…というと円高が進んだ現在で100円換算して1600億の遺産をめぐる不可思議な出来事…。「セレブ」という呼称が含む範囲がきわめて広いのと、やっぱり話題性がないと「セレブ」とはいえないあたりが微妙に面白い用語だ。そのあたりは「セレブとはいいにくくなている例」としてあげられているケビン・コスナーやシルベスタ・スタローンのエピソードが印象深い(227ページ)

2008年3月14日金曜日

帝国の陰謀(日本文芸社)


著者名;蓮實重彦 出版社;日本文芸社 出版年;1991年

 2月革命が終了したあとひっそりとフランスにもどり選挙に当選したルイ・ナポレオン。いわゆるナポレオン3世による第二帝政時代。しかし著者はルイ・ナポレオンではなく、その義兄弟である立法院議長ド・モルニーの公的文書と私的文書をテキストとして読み比較していくところに主眼がある。テクノロジーの発達、印刷技術の発達によって「例の文書」と当事者がよんでいた文書によって、革命はあっけなく成功してしまう。これが1851年12月2日の早朝。この革命からナポレオン3世は万国博覧会を開きフランスの国威発揚とやや軽めの戦争をこなしていくのだが、著者はあくまでド・モルニーという歴史的には脇役の文書を丹念に分析していく。そして第二帝政期に流行したというオペレッタとこの革命の奇妙な類似と「反復」の謎解きを筆者があっけなくしてしまう。「曖昧」な状況のもとでしかるべく進行していったこの歴史的事件は、確かに「現在」にも通じる曖昧さであり、そうそう、そういえば鈴木清順監督が「オペレッタ狸御殿」を撮影したのも21世紀のこの時代にはまさしくふさわしい行為だったのだとこの本を読んで納得してしまう結果となる。西洋画をあしらった軽い感じのする、しかしハンディなこの歴史書もしくは解説書は、まさしく第二帝政期という時代の雰囲気を「本」自体で表現しているのかもしれない。

2008年3月12日水曜日

女帝のロシア(岩波書店)


著者名:小野理子 出版社:岩波書店 発売年:1994年

 「女帝のロシア」として、ロシアの18世紀がとりあげられ、著述の多くはやはりエカテリーナ2世、ごくわずかに9代エリザヴェータの著述がある。実際にはエカテリーナ2世に関する歴史書といっていいだろう。ドイツ出身のゾフィー・ツェルプストがやがてクーデターをへてエカテリーナ2世となり、ロシアの近代化をはたすまでの歴史である。なかでも科学アカデミー院長をつとめたエカテリーナ・ダーシコワ公爵夫人に関する著述が興味深い。ディドロとも交友をもち、啓蒙思想の普及に努力した女性として、エカテリーナ2世の名声を高めるのに一役も二役もかった女性だ。新書サイズながら豊富な図版と肖像画、エカテリーナ2世の手稿などが掲載されており、内容はかなりの充実度。人名索引や家系図も掲載されており、この内容が新書サイズで読めるのは嬉しい。「歴史の歯車をまわした二人のエカテリーナ」と筆者は表現しているが、ポチョムキンがロシアの軍事、領土の拡大に尽力したとすれば、教育、科学分野での進歩はダーシコワ夫人によるものだったことが明らかにされていく。それぞれの歴史当事者の書簡も掲載されており、「人間」エカテリーナ2世を感じさせてくれる新書でもある。ただ残念なことに現在品切れ状態であるらしい。18世紀ロシアを「体感」するのには絶好の本だと思うのだが残念…。

2008年3月9日日曜日

がんから始まる(文藝春秋)

著者名;岸本葉子 出版社;文藝春秋 発行年;2006年
 40歳になり、突然のがん告知を受けた著者。持ち前の「明るさ」「自尊」といったプライドを維持しつつ、「告知前」と「告知後」の線引きなどを次第に明らかにしていく。タイトルはこれまでの岸本葉子さんの著作集よりも重たいが、抑制のきいた文章とユーモアは健在。自分だったらどうだったろう…とわが身をふりかえざるにはいられない手術前の克明な描写。何気ない一言を発する前の心境の描写。「がん」になることはこういうことなんだ…と読んでいるうちに一気にラストまで読みすすめてしまう迫力。「死に向かっていきている私たち自身が不条理なのだ」という抽象的レベルの話から、入院の支度、そして術後のサポートグループの話まで、エッセイではあるけれども、下手な小説以上に感動できる名作。そして生活書としても読んでおく価値はあるだろう。なにせ発生原因がはっきりしない病気である。「その日」に備えておく…という姿勢は重要だと思う。筆者は「外相整いて内相自ら熟す」というという岩井寛さんの言葉を日ごろから机の中に入れていたという。淡々と文章に心や生活の状況を刻んでいく姿勢はまさしく「外相」整う状態だ。普通に生活すること、普通に生きていくことの大変さを再認識する。そしてその重要さも。

2008年3月6日木曜日

コンピュータ科学基礎(TAC出版)

著者名;TAC情報処理技術者試験研究会 出版社;TAC出版 発行年;2001年
 2001年の発行にしては非常にわかりやすくしかも今でも通じる知識が丁寧に説明されている。アルゴリズムの基礎、データ構造、応用アルゴリズム(ファイル処理)、情報理論の基礎と大きく4つに分類されているがその部も非常に勉強になる。BNF記法とかまだ自分にとってはまだ敷居が高い項目も入っているのだが、これまでなんとなく勉強していたことの「底」が見えるような思いがした。書店にはまだ置いてあるということは、売り切れではないにせよ需要はある程度まだある…ということなのだろう。276ページで定価2500円。2500円でこの内容であれば充分納得。ただしB5判サイズなので持ち歩くのにはちょっと不便。余白が大きくとってあるのが学習効果をさらに高めてくれるような気がする。

2008年3月2日日曜日

ダイナミック英文法(研究社出版)


著者名;阿部一 出版社:研究社出版 出版年:1998年
 英語の空間概念、動詞の表現工夫と文型、似た動詞の使い分け、仮定法や進行形のポイントなど情報処理の流れを重視した英文法の大人向け書籍。this,that,itの使い分けなど「ちょっとわかりにくい」ところを細かく解説してくれている。映画からの台詞の引用も理解を促進。概念化やネットワーク化して知識を拡充していく方向性を示してくれる優れた英文法学習書籍。fruitがなぜ単数形でvegetablesがなぜ一般的に複数形なのかもこの本で理解できた。後は索引がもう少し細かいとより使いやすい本に。238ページ。1,800円。