2008年3月12日水曜日

女帝のロシア(岩波書店)


著者名:小野理子 出版社:岩波書店 発売年:1994年

 「女帝のロシア」として、ロシアの18世紀がとりあげられ、著述の多くはやはりエカテリーナ2世、ごくわずかに9代エリザヴェータの著述がある。実際にはエカテリーナ2世に関する歴史書といっていいだろう。ドイツ出身のゾフィー・ツェルプストがやがてクーデターをへてエカテリーナ2世となり、ロシアの近代化をはたすまでの歴史である。なかでも科学アカデミー院長をつとめたエカテリーナ・ダーシコワ公爵夫人に関する著述が興味深い。ディドロとも交友をもち、啓蒙思想の普及に努力した女性として、エカテリーナ2世の名声を高めるのに一役も二役もかった女性だ。新書サイズながら豊富な図版と肖像画、エカテリーナ2世の手稿などが掲載されており、内容はかなりの充実度。人名索引や家系図も掲載されており、この内容が新書サイズで読めるのは嬉しい。「歴史の歯車をまわした二人のエカテリーナ」と筆者は表現しているが、ポチョムキンがロシアの軍事、領土の拡大に尽力したとすれば、教育、科学分野での進歩はダーシコワ夫人によるものだったことが明らかにされていく。それぞれの歴史当事者の書簡も掲載されており、「人間」エカテリーナ2世を感じさせてくれる新書でもある。ただ残念なことに現在品切れ状態であるらしい。18世紀ロシアを「体感」するのには絶好の本だと思うのだが残念…。

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