2008年3月18日火曜日

不動産は値下がりする!

著者名:江副浩正 出版社:中央公論新社 発行年:2007年
不動産の相場は金利と逆相関にある…というシンプルな命題からさらに地域ごとの不動産の価値や今後の価格動向を見極めていく。ここのところミニバブル的な活況を不動産業界は享受してきたが、建築基準法の改正や強気の土地の仕入れがここにきて契約率の低下に苦しむ結果になっている。どちらかといえば未来予測というよりも不動産の「今」と「これから」を緻密に分析したレポートといった色彩が強い。ただし不動産業界には厳しい話が続く。J-REITの説明も非常にわかりやすく丁寧だが、その行く末については筆者は必ずしも楽観的ではない。現状では、不動産価格の上昇にたいして消費者の所得の上昇がついていっていない。その結果、マンションの需要に結びついていかないといった状況になっているが、著者が指摘しているように郊外の物件から価格下落、そして中小のデベロッパーから「投売り」に近い状況になる可能性はきわめて高い。そもそも少子高齢化の時代、企業のスリム化、大学の移転の可能性などを考えると土地の供給は増えて需要は長期的には減少することになる。その間で「上がるものは上がる」わけだから、まさしくサブテーマとしてあげられているように「見極める目」が重要な時代になったといえるのだろう。将来の金利予測は日本銀行以外だれにも確実なことはいえないが、まさかいつまでもこの超低金利を続けていくわけにもいくまい。ごく少数の「値上がり物件」とかなり多数の「値下がり物件」という不動産価格の「格差社会」の到来をこの本は予測しているような気がする。

0 件のコメント: