2008年4月13日日曜日

「自由な時代」の「不安な自分」(昌文社)


著者名:三浦展 出版社:昌文社 発行年:2006年
 「下流社会」のベストセラーで一躍その名前を世間に広めた三浦展氏の単行本書籍。筆者が一橋大学社会学部時代の3年生のときに執筆したという論文なども収録されている。「自分探し」の不安定さから、「消費中毒」「永遠志向」「自己改造志向」という3つのキーワードを導出し、「消費も仕事にする時代」という分析を行う。ただあまりにも高度に発達した消費社会では、「消費」だけでは「自分」を語ることが出来なくなってきている…という刺激的な論調だ。マーケティング雑誌などの編集者もかつてはつとめていたと同時にオーソドックスな社会学の研究もしていた著者。大学の社会学者でも市場のマーケッターでもない独自のスタンスで、「社会」を語る姿勢が面白い。インターネット世界で「一種の社会の縮小」が起きていることを指摘するなど、新書サイズの「下流社会」とはまた異なる「過激」な内容をこの単行本で展開。何某新興宗教と○○制度を比較、論じるなど「道徳」のあり方も含めて目のさめるような分析が満載。そう、確かに「道徳」を精神的支柱にするには一定の高度経済成長がなければ無理なことだったし、「道徳」が必須と考えられる時代は裏返せば食欲も含めた物質的なもの、商品的なものが消費しきれないほど満ち溢れていることの裏返しでもあったのだ…。

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