2008年4月13日日曜日

あぁ、阪神タイガース(角川書店)

著者名:野村克也 出版社:角川書店 発行年:2008年
 今年のプロ野球開幕前に電撃的に出版された野村克也・東北楽天ゴールデンイーグルス監督の「阪神タイガース論」。すでに巨人軍についての分析した書籍があるが、リーグが違うとはいえ、開幕前に別の球団の戦力分析や勝因・敗因などを分析した本を出版できるのは、やはり野村克也氏ぐらいしかいない。「相手の弱点をつく」「知力・体力・気力のバランス」などすでにヤクルトスワローズや昨年の楽天で実績をあげた持論に加えて岡田監督の采配などについても言及している。中心なき組織に中心(エースや4番打者)をすえつけ、さらに適材適所で配置を決めていく野村監督の野球理論はやはり秀逸。現在、楽天でも元阪神の高波という足の速い選手が出場しているが、これは「足の速さ」を重視した適材適所の具体例だろう。中日をお払い箱になった山崎選手が打者として復活し、チームを牽引しているのも適材適所の一例だと思う。シーズン前に阪神タイガース論を展開し、楽天の昨年を振り返るのは、おそらく野球ファンへのサービス精神というよりも、むしろ現在の楽天の選手に「意識改革」を促すためかもしれない。現在のプロ野球の制度であれば楽天と阪神がともにAクラスに入れば日本シリーズを両者で争うこともできる。シーズン末の「エンターテイメント」をシーズン前に用意してくれたファンサービスの一種とも考えられるが、いずれにせよ「弱者」でも「強者」に勝てるケースがありうるという例は、この本に限らず実際の野球の試合で野村監督がみせてくれたとおり。野球理論の正確さが「実証」されるのは、今後の楽天の成績の「伸び」が証明することになるのだろう。野球理論のケーススタディであると同時に、組織の管理原則や指揮官の役割などについても考察している新書本。

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