2008年4月20日日曜日

日本の10大新宗教(幻冬舎)


著者名:島田裕己 出版社:幻冬舎 発行年:2007年
 宗教学科というとどこの学部に所属すべきなのかよくわからなかった。「昔」というか、革新主義と保守主義が二大対立をしていた時代には、どちらにも幻滅していたがなにかしらの世界観を求めている若い世代は新興宗教もしくは新宗教といった世界に「救済」を求めている人、結構多かったと思う。この本ではいろいろな理由で「掲載不可」となり10のジャンルに選別されていない反社会性の強い宗教にもかなり頭脳明晰な理系の人間が入信したりした。大学では文学部に宗教学科が設置されていたが、考えてみれば「宗教」は社会の一部なので社会学科や営利団体的な側面をみれば経営学科などでも取り扱うべきテーマだったかもしれない。あるいは物理学科などの学生が、履修してもおかしくはないジャンルだったのではないかと思う。元早稲田大学の大槻先生などは物理的側面からオカルト的要素を批判していたが、「宗教」というテーマを扱う場合には批判的な見方から肯定的な見方まで含めてもっと理系の学者や他の学科の学者からの発言があってもいいのかもしれない。そしてこの本では「いまひとつ歴史的経緯がわかりにくい」「教義の由来がわかりにくい」(しかし)「その名前はよく聞く…」という10の新宗教について取り扱われている。天理教、大本、生長の家、天照皇大神宮教、立正佼成会、霊友会、創価学会、世界救世教、PL教団、真如苑、GLAといった宗教団体だが、憲法の信仰の自由や政教分離の問題、そもそも客観的に社会科学や自然科学などのジャンルでどう取り扱うべきか非常に難しいテーマに挑む新書になっている。学者の立場とすると特定の宗教にのめりこむわけにもいかず、かといって「のめりこまない」とある程度理解できない部分もあるだろうし、非常に描きにくい問題だろう…というのは著者の島田氏の研究活動を昔から見ていて認識していた部分だが、おそらくどこの団体からもそれなりの抗議と批判を受けるのを覚悟で出版する「勇気」がすごい。2007年11月発売で2月5日の版にしてすでに第10刷。隠れたベストセラーではないかと思う。

0 件のコメント: