2013年5月5日日曜日

マンチュリアン・レポート(講談社)

著者:浅田次郎 出版社:講談社 発行年:2013年(文庫本) 本体価格:629円(文庫本)
 昭和3年6月4日、満州軍閥の領袖張作霖が乗った鉄道が爆破。「治安維持法改悪に関する意見書」を配布した志津中尉は陸軍刑務所に収監されていたが、とある「やんごとなき方」からの勅命を受け、事件の真相をさぐりに満州へとぶ…。
 大日本帝国が張作霖の軍閥を通じた間接支配から、柳条湖事件を通じた直接支配に乗り出す時代の狭間を描く。著者の浅田次郎氏は、元自衛隊員だが、独自の視点から日本と中国の関係を見つめ直す作品を執筆。「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」「中原の虹」で清国末期と中華民国の始まり、軍閥の活動などを描いたが、シリーズが進むにつれて日本人の登場人物が増えてくるのが特徴。張作霖爆破事件にしても、これまでは張作霖が乗車していた鉄道が爆破されていたものと思っていたが、この本を読んで奉天近くの満州鉄道の橋脚が爆破されたものと知る。
 やや叙情的な場面が多いものの、凄惨な事件が相次いだこの時代を描写するには、センチメタリックな描写をせざるを得なかったのかもしれない。

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