2013年5月4日土曜日

ビブリア古書堂の事件手帳 4(メディアワークス)

著者:三上 延 出版社:メディアワークス 発行年:2013年 本体価格:570円
 「ラノベ」「ラノベ」とやや低く見られているジャンルではあるが、第1巻から第2巻、そしてこの第4巻に至るまで、続編がでてくるごとに内容がグレードアップ。この第4巻で扱う古書のテーマは「江戸川乱歩」。
 1つの「巻」ごとに小さな題材を扱い、「栞子さん」の家族をめぐる大きな謎が少しづつ解明されていくという流れになる。自分自身もポプラ社版の怪人二十面相シリーズは全巻小学生のころ読んでいただけにこの第4巻には読んでいるうちに時間を忘れる。巻末の参考文献などからして著者はこれまで以上に取材を重ねて第4巻の刊行に及んだものと推測できるが、この本を読むとさらに「押絵と旅する男」「孤島の鬼」といった江戸川乱歩の作品も読みたくなるから不思議だ。
 かつて江戸川乱歩が居住し、作品を書いていた土蔵は現在、立教大学が所有・管理しているが、著者はその立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センターからも取材。かつてその土蔵が公開されたときは長蛇の列の最後尾に並び、ほんの数十秒だけ土蔵の中を見ることができたが、あの独特の漆喰の匂いがたちこめる空間から江戸川乱歩の作品が生まれ、そして21世紀にこうしてその世界にインスパイアされた古書モノ探偵シリーズがでてくるということに感慨を覚える。ひとつの優れたイメージは、また時間を超えて別の作家のイマジネーションを刺激して、さらに新しいイメージの世界を創りだす力があるようだ。

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