2013年5月14日火曜日

倒産社長の告白(草思社)

著者:三浦紀夫 出版社:草思社 発行年:2003年 本体価格:1400円
 学生時代にアルバイトをしていた編集制作会社にそのまま1978年にした著者は、1990年に社長に就任。その後、浮き沈みはあるものの人員合理化と販売促進、資金繰りにおわれることになる。株式会社コアという会社で、途中出版部門を運送会社に営業譲渡し、それがもとで誕生したのがフットワーク出版。たしかこの会社は文京区江戸川橋に事務所があったはずで、自分自身が実際に目でみた会社や早稲田鶴巻町などなじみの深い町名が続出。それだけに、話が進行するにつれて、次第においこまれていく様子が読んでいて辛い。
 しかもメインバンクが金融庁によって強制破綻させられて永代信用組合。株式会社コアの資金繰りを壊滅的にしたのは、この信用組合の強制破綻が致命的だったようだ。とはいえ途中、資金繰りがよくない会社への債務保証や市中金融からの借り入れ、融通手形の降り出しなど、倒産の予兆とされる取引が続出。むしろ2002年までよく経営が継続したものと思うべきかもしれない。成功した企業の物語は山ほどあるが、この本は財務諸表に化粧がほどこされた会社の経営を委託され、その延命に個人財産もついやした経営者の話。非常にレアな出版物で、、しかも整理回収機構に債権譲渡された場合の借入企業の資金繰りや、メインバンクが経営破綻した場合の中小企業の痛手、債務保証のおそろしさや友人の大事さといった貴重なエピソードが満載だ。「万が一」に遭遇したときの生き残りの方向を模索するのにも役立つ一冊となる。

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