2013年3月27日水曜日

学び続ける力(講談社)

著者:池上彰 出版社:講談社 発行年:2013年 本体価格:720円
 「リベラル・アーツ」という言葉をこれまで誤解していた。ヨーロッパでうまれた概念で奴隷を「解放」して自由民にするための「学問」をリベラル・アーツということのようだ(これまで個人それぞれが自由に学習することをリベラル・アーツというものだと思い込んでいた)。アメリカの大学は学部4年間はいわゆる一般教養を学習して大学院で専門教育を受けるのが一般的だが、今の日本の大学は一部を除いて一般教養の課程はほぼ壊滅している。専門教育に1年生から入るのが良いのか、あるいは専門教育にほとんど関係ない一般教養を2年間やるのが良いのか、という議論はつきないが、個人的にはリベラル・アーツのメリットにやや軍配があがる。ひとつにはまず大学の専門教育はせいぜい頑張っても4年間。社会にでてから定年退職まで約40年間あるわけだから、学部の専攻に左右されて、自分が履修していないジャンルへのチャレンジ精神をそこなうデメリットは大きい。著者自身もNHKに経済学部を卒業してから入社し、刑法と刑事訴訟法を独学で勉強している。また会社の仕事の合間に英会話学校などにも通学して英語を勉強。それが今の池上彰さんの下地をつくっているわけだから、大学の専門教育よりも自ら進んで学習した一般教養のほうが影響が大きいともいえる。実際のところ文学部を卒業しても社会人になった段階で会計学や法学などの素養が求められることが多くなるし、情報処理技術は文学部でも論文作成時には必須のスキルとなる。仏文学でもバルザックなど手形法などを作品に用いている場合には、あらためて学習することも必要になるだろう。狭いジャンルで定型的な発想で研究や学習をするよりも、多角的に自分の学習領域を広げておいたほうが、結果的に自らの専門性を深めることもある。本書では106ページに展開されているキーワードをみつけて、キーワードをつなげていくノートの取り方なども紹介されており、興味深い。

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