2013年3月20日水曜日

目からウロコの世界史物語(集英社)

著者:清水義範 出版社:集英社 発行年:2010年 本体価格:686円
 ギリシア時代のソクラテス、マケドニアのアレキサンダー、ポエニ戦争、イエス・キリスト、中国史、ムハンマド、セルジュク・トルコとウルバヌス2世、十字軍とサラディン、ホラズム・シャー王国とモンゴル、メフメト2世によるコンスタンティノープルの陥落、中南米の歴史、グラナダ陥落とコロンブス、狂女ファナとカルロス1世、ムガール帝国、ハプスブルグ家とオランダ、エンリケ王子から産業革命まで、、ケマル・アタルチュク、ガンディーと、なんと世界史数千年をA6判の文庫本451ページにまとめてしまった本。しかも面白い上に解説は斎藤孝という豪華な造り。ややイスラムの世界史の解説にページがとられ、中国の歴史は簡略化されているが、やはり著者はイスラム文化に興味がひかれているようだ。最近の高等学校の世界史の教科書も中南米の歴史や、イスラム文化などについて取り扱いの比重を高めつつあるが、そのデメリットとしてますます世界史のさまざまな事項が、知識偏重になっている印象を受ける(というよりも限られたページ数で、扱う項目が増加すれば、年号と事象の羅列になるのは避けられない)。で、扱わないよりはむしろイスラム文化も中南米の歴史も掲載しておいたほうが、後日、イスラムとヨーロッパをめぐる近現代の事象を解読するさいにも有用という面もある。知識と知識の流れを掴むのには結局それぞれ個人が一般書籍で理解を深めていくより方法はないが、そもそも歴史的知識がなければ流れすらつかめないのだから、やはり知らないよりは知っておいたほうがよい。で、この本は「流れ」を掴むのに非常に適している。もちろん幾分かは遊び心も入っているので、厳密な歴史書というわけではない。ただ、教科書とは異なる大づかみの歴史を知ることができるという意味では出色だ。
 近現代史を重視すべき、という意見もあるが、個人的にはその立場には与しない。イスラム教が生まれてきた流れや、イスラム教とキリスト教が対立するようになった所以などは近現代史のさらにその前提となることがらだ。考古学までさかのぼらなくても、少なくとも有史の一定の知識があって、現在の日本や国際情勢を深く理解できるものだと思う。中国の歴史を振り返れば、中国の最近の覇権主義についても理解が深まるし、フランク王国からローマ帝国の歴史をみればEUがそうそう簡単には全面的に解体することもないことがわかる。そしてパレスチナ問題も含めてイスラム教徒とキリスト教徒の相互理解は、個人レベルでは一定程度達成できてもある一定の組織どうしとなれば今後100年や200年では和解などは成立しえないことも。あ、アラブ民族とトルコ民族が違うっていうこともこの本で理解できるので、そうした理解をもってほかの歴史の書籍にあたればより歴史に興味がもてるようになるとも感じる。

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