2013年3月18日月曜日

発火点(文藝春秋)

著者:桐野夏生 出版社:文藝春秋 発行年:2012年 本体価格:552円
 「戦う美形の小説家」桐野夏生の対談集。対談の相手も非常に手ごわい顔ぶればかりで松浦理英子、皆川博子、林真理子、小池真理子、柳美里、坂東眞砂子、西川美和といった作家が中心で、たまにまぎれこんでいる重松清、佐藤優、原武史といった人たちが可愛くみえる。なんかこう桐野夏生の小説を読んでいると、ドロドロの世界を髪の毛をつかまれてひきずりまされているような居心地の悪さを感じることが多いのだが、「読んですっきり快適」といった小説は後に何も残らない。後味が悪いくらいでちょうどよいのかもしれない。
 タイトルが「発火点」とあるように極めて友好的に会話が進んでいるケースもあれば、佐藤優氏との対談のように桐野夏生が意地悪く「でも逮捕されちゃったんですよね」と切り込んでいく対談もある。摩擦が生じてそこから炎がたちあがるという意味では、稀代の読書家佐藤優氏との対談が個人的には非常に興味深いものがあった。
 「ふふふ…逆に破壊してしまうかもしれない」と話す桐野夏生、やっぱり実際にあったら怖いよなあ…。その一方で「情けない男は好きです」と言い切る義侠心みたいなものまで散見できて面白い。

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